性風俗の現場から見えた「相談する力」の必要性とアウトリーチの意味ー坂爪真吾×駒崎弘樹ー

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2017.12.11

Megumi Kikukawa
菊川 恵
NPO Florence

NPO法人フローレンス所属。こども宅食広報担当。(Twitter:megumikikukawa

「本当に困っている人は、自分が何に困っているか分からない」

性風俗で働く女性のサポートを行う、一般社団法人ホワイトハンズ代表理事の坂爪真吾さんは、こう語ります。

坂爪さんは、性風俗で働く女性たちの元に足を運んで生活相談に乗る「風テラス」という活動をされています。坂爪さんが、女性たちをサポートする中で見えてきたのは、「相談をするにも、“力”が必要だ」ということでした。

坂爪真吾
一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。新しい「性の公共」を作る、という理念の下、重度身体障害者の性に対する支援や、風俗店で働く女性の無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。

 

駒崎弘樹
認定NPO法人フローレンス 代表理事。日本初の「共済型・訪問型」病児保育サービスで共働きやひとり親の子育てをサポート。小規模保育園、障害児保育園を運営。内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長などを務める。

 

 

女性たちの悩みは、性風俗特有のものではなかった

駒崎:坂爪さんは約2年前から、性風俗で働いている女性の支援をされていますよね。活動内容について教えてください。

坂爪:僕たちが主に行っているのは「風テラス」というアウトリーチ活動です。アウトリーチとは、支援が必要な状態にも関わらず、相談窓口に来られない人に対して、支援者側が直接現場に出向いて支援を行うことをいいます。

風俗店には、女性が男性客からの指名を待つ「待機部屋」というものがあります。風テラスでは、弁護士とソーシャルワーカーがチームを組んで待機部屋に足を運び、法律相談や生活相談に乗っています。

駒崎:なぜ、あえて風俗店にアウトリーチすることにしたのですか?

坂爪:きっかけは、鶯谷のラブホテル街にある風俗店「鶯谷デッドボール」に出会ったことでしたね。

僕は、多くの性風俗の現場に取材に行っているのですが、鶯谷デッドボールは特に印象的でした。彼らは、あえて自分たちのことを「地雷専門店」と呼んでいました。

「地雷」とは、年齢や容姿、性格などの理由で他のお店では面接に落ちてしまう女性をさします。その中には、病気や障害、生活困窮などの問題を抱えた女性も少なくありません。

坂爪:女性たちの話を聞いてみると、「恋人からDVを受けている」「Wワークしているのに生活が辛い」など、性風俗特有の悩みというよりは、一般的な生活相談や法律相談に寄せられる悩みとほぼ同じでした。

しかし彼女たちは、風俗で働いていることを誰にも言えず、自分の悩みをうまく言語化できないことから、なかなか相談機関にたどりつかなかったんです。

駒崎相談窓口に足を運べるのって、“相談する力”がある人だけですよね。

相談に行けない人ほど、自分が何に困っているのか理解できていないことが多いように感じます。支援者側が足を運んで、一緒に困りごとを紐解くことが必要だと思います。

坂爪:本当にそう思います。性風俗の現場でも、まさに同じことを感じ、知り合いの弁護士とソーシャルワーカーに声をかけてチームを作ってお店に出向いたのが、「風テラス」の始まりなんですよね。

福祉とつながっても、関係が途絶えるケースも

駒崎:実際に「風テラス」の現場では、どのような方に支援をされてきたのですか?

坂爪:ケースによって様々ではありますが、結構重い事例もありますね。

例えば、軽度の知的障害がある女性で、激安風俗店を渡り歩き、あちらこちらで問題行動を起こしては孤立してしまうというケースもありました。

実はその方は、福祉制度や支援者ともつながった経験があったのですが、途中で関係が切れてしまっていたんです。

駒崎:それは女性の方から関係を断ってしまったのでしょうか?

坂爪:行政の窓口担当者とトラブルを起こしたり、支援者に暴力を振るってしまったため、支援や契約が打ち切りになってしまいました。

ただ、よくよく話を聞くと、縦割りの制度の中でたらいまわしにされる中で、「自分の話をきちんと聞いてもらえなかった」「支援者側の都合や道徳観を押し付けられた」など、彼女なりの理由があることが分かってきました。

駒崎:福祉的な支援を受ける必要があった方なのに、うまく支援を受けられず、契約が打ち切られてしまったというケースですよね。まさに、先程の「支援を受ける力」につながりますね。

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相談を待つのではなく、支援者側から働きかける

駒崎:支援をすんなり受けるためには、「支援を受ける力」が必要になると思うんですよ。

具体的には、自分が何に困っているか認識できることや、それを周りに伝えられることも、その力の一つだと思います。

それができて初めて、自治体の相談窓口に足を運べると思うんです。

坂爪:本当にそう思います。相談するにも、「力」が必要です。

本当に困っている人は、そもそも自分が何に困っているか分からない人も多いです。そういう方は相談窓口を作って区役所で待っていても、絶対に来てくれません。

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坂爪:だからこそ、声を上げられない人の元に自ら足を運んで話を聞き、解決策を提案していくというアウトリーチが重要になる。

ご本人の抱えている困りごとを整理するお手伝いをしながら、必要に応じて他機関と連携して、風俗という「見えづらい」世界を社会とつなぐ試みを続けていきたいと考えています。

駒崎:我々も「こども宅食」という事業で、経済的に厳しいご家庭に訪問して食品を届けていますが、やはり実際にご家庭に行ってみて気づくことも多いです。

一見、マンションは立派に見えますが、日々の暮らしで精一杯で家の中まで手が回らないご家庭もあります。

障害のあるお子さんがいて、子育て支援が手厚い文京区から離れられないと仰っているご家庭もありました。

こども宅食を利用している家庭の中にも、近所の目が気になって相談に行けない方や平日の昼間に会社を休んで窓口に行けない方もいらっしゃいます。

「風テラス」でも実践されていますが、アウトリーチして、相手のニーズに耳を傾けることが本当に重要ですね。ただ待っているだけのではなく、自ら足を運ぶべきです。我々もアウトリーチを実践していきたいです。

(了)

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「こども宅食」では、食品を届けるために家庭訪問を行い、もしもご家庭に困りごとがある場合は、必要とされているサポートにつなぐ活動をしています。

初年度は150世帯に食品を届ける予定でしたが、当初の予想の3倍である約450世帯からのお申込みがありました。ご希望いただいた家庭に食品を届けられるように、ご寄付を受け付けています。

ふるさと納税を使っているので、寄付者の方のご負担は2,000円にも関わらず、数万円~数十万円もの寄付をして頂けます。

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