寄付企業・団体向け2024年度「文京区こども宅食」事業報告会を実施しました
<事業報告編>
文京区こども宅食は、文京区にお住まいの経済的に厳しいご家庭に食品や日用品を定期的に届け、それをきっかけに必要な支援につないでいく取り組みです。
約800世帯にお届けしている配送品や体験機会のほとんどは、事業に賛同してくださった企業や団体の皆さんからの寄付で成り立っています。
文京区こども宅食では、そんな支えてくださる寄付企業・団体の皆さんに向け、毎年年度末に事業報告会を開催しています。
報告会の前半は、文京区こども宅食の事業の意義や、2024年度の取り組み内容についてお伝えしました。
今回の記事では、その前半の様子をお伝えしていきます。
事業報告会について
文京区こども宅食は、官民7団体が対等な関係でパートナーシップを組み、コンソーシアムを形成して運営しています。
事業報告会では、コンソーシアムメンバーがそれぞれの役割にのっとり、文京区こども宅食やその成果、2024年度の取り組みについてご報告を行いました。
事業報告会の流れ
1.開会の挨拶
(認定NPO法人キッズドア理事長 渡辺由美子)
2.「文京区こども宅食」事業紹介
(認定NPO法人フローレンス代表理事 赤坂緑)
3.2024年度「文京区こども宅食」事業報告
・社会的インパクト・マネジメントによる事業実施と改善
・2024年度の取り組みと成果
・事業の発展に向けた課題と検討
(認定NPO法人日本ファンドレイジング協会常務理事 鴨崎貴泰、
認定NPO法人フローレンス代表理事 赤坂緑)
―ここまでをこの記事でお伝えします
4.文京区長からの挨拶(文京区長 成澤 廣修)
5.感謝状贈呈(文京区長 成澤 廣修)
6.ご支援企業からのご挨拶(津和野町東京事務所 係長 佐伯晃 様)
7.閉会の挨拶(ココネット株式会社 取締役社長 執行役員 堀井拓次)
今回の記事では事業報告までをご紹介し、文京区長からの挨拶や感謝状の贈呈、寄付企業からのお話は、後半の記事<ご支援企業・団体編>でお伝えします。
1.開会の挨拶(認定NPO法人キッズドア理事長 渡辺 由美子)
認定NPO法人キッズドア理事長の渡辺由美子より、開会のご挨拶をさせていただきました。キッズドアは、文京区こども宅食事業において、主に物流や配送の管理、不足分の食品購入を担当しています。
私たちキッズドアは、15年以上にわたり日本の子どもの貧困に取り組んでいます。
15年以上もやっておりますので、日本に貧困なんてあるの?文京区に貧しい子なんているの?などと言われることも少なくありませんが、困っている方は確かにいらっしゃいます。
日本のような先進国の貧困は相対的貧困率という尺度で測るのですが、相対的貧困は外見だけではわかりづらく、見えにくいというのが現状です。子どもたちにご飯を食べさせるため春休みにどこにも連れていけない、新しい文具を買ってやれない、そういった苦労をされているご家庭は文京区にも一定数いらっしゃいます。文京区こども宅食はそういったご家庭、子どもたちを支えているわけで、本当に良い事業になってきたなと思います。今年度もたくさんのご支援をいただき、ご家庭には大変喜んでいただいています。
来年も再来年も事業を継続できるよう、引き続きのご支援を賜りますようお願いいたします。
2.「文京区こども宅食」事業紹介
(認定NPO法人フローレンス代表理事 赤坂 緑)
最初に、認定NPO法人フローレンス代表理事の赤坂緑より、子どもの貧困をめぐる問題と文京区こども宅食事業のご紹介をいたしました。フローレンスは文京区こども宅食事業において、事業推進や寄付品の調達・企業連携、利用者対応、広報を担っています。
文京区こども宅食は、2017年に全国で初めてこども宅食を開始し、今年で8年目を迎えます。経済的な面だけでなく、様々な形で困りごとを抱えるご家庭に対し定期的に食品をお届けしています。
こども宅食が生まれた背景には、日本の子どもたちの約9人に1人が相対的貧困状態にあるという現状があります。相対的貧困とは、年間の手取りの中央値の半分以下で暮らしている状態と定義されています。ひとり親家庭に限定すると、約2人に1人が相対的貧困状態にあると言われています。
文京区こども宅食の対象世帯は、就学援助や児童扶養手当などの制度を利用しているご家庭で、現在文京区内では約1,000世帯が対象で、そのうち8割ほどの方にお申し込みいただいています。
2017年10月に始まった当初は150世帯の利用者からスタートし、2024年10月には781世帯に、最新の2025年4月では784世帯にお届け予定で対象世帯の拡大が続いています。行政機関でも多くの支援制度が用意されていますが、平日の昼間に自ら出向き申し込む余裕がない、周りに知られては困るなど様々な事情で支援にたどり着けない人たちがいます。
文京区こども宅食は申し込みを待つのではなく、こちらから食品をお届けすることをきっかけに接点を持ち、出向き、つながっていく。その仕組みが必要だと考えています。文京区こども宅食は、文京区さんと様々な企業・団体が協業して大きなインパクトを出そうという形で運営しています。もちろんそれだけではなく、本日ここに来ていただいた企業・団体さんのご寄付やご支援、個人の方によるご寄付など本当に多くの方々に支えられて運営できています。改めて感謝申し上げます。
3.2024年度「文京区こども宅食」事業報告
(認定NPO法人日本ファンドレイジング協会常務理事 鴨崎 貴泰、
認定NPO法人フローレンス代表理事 赤坂 緑)
・社会的インパクト・マネジメントによる事業実施と改善
続いて評価を担当している認定NPO法人日本ファンドレイジング協会常務理事の鴨崎貴泰より、文京区こども宅食プロジェクトの成果について解説しました。
文京区こども宅食事業の社会的インパクト評価の結果について、抜粋してご報告します。
文京区こども宅食が行っている支援により、お子さんやご家庭にどのような変化が生まれているかを社会的インパクトとして効果把握をし、皆さんにご報告したり、インパクトレポートという形で結果を開示しています。
また、事業評価を行っていく際のロジックモデルとして、宅食の支援により、ご家庭やお子さんたちにどのような変化がどのような順番で起こっていくのかという因果関係を仮説としておき、実際のデータをとり、その仮説が合っているのかを検証しながら事業のPDCAサイクルを回しているのが、文京区こども宅食の最大の特徴です。こういったアプローチを行っているのは、寄付者の皆さんへの説明責任と事業活動の改善につなげるという2つの目的があります。
これらを確認するために、配送を行っているご家庭へのアンケートやLINEでのやりとりをもとに評価を行っています。
・2024年度の取り組みと成果
ここからは2024年度の特徴的な成果についてご説明します。
①食品配送について
配送スタッフからの報告やお子さんのお手紙などからとても喜んでいただいている様子がこちらでも確認できていますが、アンケートからは、食事内容に変化が生まれたとの回答が約7割、食事の品数が増えた、間食ができるようになったというお声も多く見られました。また67%が食費を削減できたと答えていて、浮いた費用で追加の食品を購入したり、その他生活に必要なことに使っていただいている様子がわかりました。②情報提供について
利用者さんとはLINEでダイレクトに繋がっているため、行政サービスやお子さんの教育関連の情報、生活に役立つ情報などをお送りしました。
成果として、「社会とのつながりを感じるようになった」が4割近く、「安心して生活できるようになった」が5割近くいらっしゃり、ご家庭の心理的な面に良い影響を及ぼしていることがわかりました。③機会提供について
コミュニケーションを取る場としても活用しているほか、LINEを通じ困りごとや悩み事をお話しいただくことにもつながっています。
昨年は合計10回の体験機会提供キャンペーンを実施し、延べ756世帯からご応募いただき、296世帯に提供できました。④相談対応について
文京区こども宅食が近年非常に力を入れている支援になります。
孤立化しがちなご家庭に向け、こども宅食ではプロフェッショナルな資格を持つスタッフが対応するチャットを運営し、半数以上の方にまた相談したいと回答していただいています。23年度と同様に、子育て/教育に関する相談が100件を超えて最も多いという結果になりました。
・利用者ロングインタビューからわかること
今年の2月に、実際にお子さんを2人育てていらっしゃるシングルマザーの利用者さんにインタビューをさせていただきました。この方のインタビューから、こども宅食が目指すゴールの達成につながるであろうアウトカム(成果・変化)を見ることができたので、一部ご紹介させていただきます。
まずお受け取りいただいた感想ですが、「普段買わないものなのでご褒美・助かる」といったお声をいただきました。
これらは食事内容の改善や、食費の負担軽減などにつながり、家計が楽になるというアウトカムにつながっていると考えます。続きまして、情報配信や体験の機会提供に関して、ほぼ毎回応募してくださっているようで、「チケットを応募しての観戦は時間もお金もないのでとても助かる」「家族で過ごす時間ができてすごくうれしい」とおっしゃっていただきました。
また、生活面や精神面の変化についても伺いました。
「家計が楽になっていることで教育費に充てられる」と回答していただき、さらに「見守ってくれる温かさがある」や「逃げ場」と表現してくださいました。
LINEの相談窓口では「どこに聞いていいかわからないことをチャットで聞いている」とお答えいただき、気軽に聞ける存在は心強いと感じていただけているのではないでしょうか。この方にとっては「食品や情報、機会などを定期的にお届けすることで関係性を築き、こども宅食自身が助けを求める先にもなり、さらにそこから必要な社会資源につなげていくことができている」まさに「こども宅食」の事業が目指すものになれていることがわかります。
この方だけではなく、ご寄付いただいている皆さんへの感謝をお話してくださる方がたくさんおられます。改めて、この活動を応援してくださる皆さんに心より感謝を申し上げたいと思います。
・事業の発展に向けた課題と検討
文京区こども宅食の支援へのニーズは高まる一方で、その活動には資金面や食品面等の課題も多く、私たちはできるだけ活動を継続し、長くご家庭に寄り添うために、どのような形での支援がより良いのかを引き続き議論しております。
昨今、子どもたちへの支援が各地で立ち上がり寄付が分散していることや、物価高騰の影響などもあり、文京区こども宅食への寄付状況は厳しくなっております。
ぜひ、皆さんの会社や団体で、家庭や友人にご紹介いただき、この活動を応援いただけますと幸いです。
文京区長からの挨拶と企業や団体の皆さんへの感謝状贈呈、およびご協力企業のお話は後半の記事でご紹介します。
文京区こども宅食では、引き続き食品・日用品などの配送品や体験機会のご寄付、ふるさと納税へのご協力など、様々な形でのご支援をお願いしております。
皆さんのちょっとした優しさが、子どもたちの明日を支えます。是非ご協力をお願いします!