止まらない物価高騰の中、厳しい環境にいる親子を支える複数の追加支援を実施
~文京区こども宅食「インパクトレポート」を公開~

こども宅食事務局

こども宅食事務局が、こども宅食の歩みや、子どもの貧困についてのニュースをお届けします!

文京区内の経済的に困窮する子育て世帯へ2ヶ月に1回定期的に食品をお届けしている「こども宅食」を運営する「文京区こども宅食コンソーシアム」(https://kodomo-takushoku.jp/)は、文京区内約800世帯のこども宅食利用家庭に行ったアンケート調査結果をもとに、事業が生み出した効果・成果に加え、事業の実施状況や利用家庭の実態、ニーズを取りまとめた、第8期(2024.10~2025.9)インパクト・レポートを公開します。

インパクト・レポートは2018年度分から毎年作成しており、今回で8回目となります。

支援を行うだけではなく、社会的な効果や価値を評価し、事業改善に活かす

文京区とNPO等、7つの組織が官民協働で行う文京区こども宅食は、経済的に困窮する子育て世帯に食品等をお届けし、困り事があった際には必要な支援等につなげる活動を行っています。

また、その活動がどのような効果や価値を生んでいるかを評価し、事業改善に活かすため、文京区こども宅食コンソーシアムでは以下の2つの目的を持って「社会的インパクト・マネジメント」を行っています。

①社会的インパクト評価により、事業が生み出す社会的価値を可視化し、検証すること
②社会的インパクト・マネジメントを通して、こども宅食事業の運営改善をすること

インパクト・レポートでは、利用者を対象に実施したアンケート等の分析結果をもとに、ロジックモデル(事業や組織が最終的に目指す変化・効果の実現に向けた事業の設計図)を用いた事業のプロセス管理や、ロジックモデル上に設定した成果の検証を行いました。

社会的インパクトマネジメントとは
「社会的インパクト」とは、短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカムのことであり、「社会的インパクト・マネジメント」とは、事業や取り組みがもたらす変化や価値に関する情報を、各種の意思決定や改善に継続的に活⽤することにより、社会的インパクトの向上を⽬指す体系的な活動のことをいう。
「社会的インパクト・マネジメント・ガイドラインVer.2」(2021年作成 社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ より引用)

*調査概要(利用世帯アンケート)

評価対象期間 2017年10月(第1期の初回配送)- 2025年9月
調査方法   オンラインアンケート(一部紙面にて実施)
調査実施期間 2025年9−10月年調査対象総数 918世帯*
回収総数   506世帯
回収率    55%

*2017年10月- 2025年9月に文京区こども宅食を利用したことがある世帯および2025年10月より新たに利用する世帯

 

第8期(2024.10~2025.9)インパクト・レポートの全文(概要版:PDF/45頁|詳細版:PDF/20頁)

アンケート票

なお、上記の利用世帯アンケートに加え、宅食の内容に関する満足度調査、利用世帯との日々のコミュニケーションによって得られたデータ、情報も一部活用し、定量的、定性的な評価を行っている。

この調査では、①計画フェーズ、②実行フェーズ、③効果の把握フェーズ、の3つのフェーズごとに評価を行っています。

①計画フェーズにおける評価:
約3分の1が「赤字で貯蓄を取り崩している」と回答
計画フェーズにおけるニーズ評価から、利用世帯の半数以上がひとり親家庭であることがわかりました。多くの世帯で就学児を育てており、一人の収入で家計を支えています。子が病気になると仕事を休まざるを得ず、収入アップも難しいことから、厳しい生活状況にあり支援が必要な世帯であることが窺えます。
これに加え、物価高の常態化や、約3分の1の家庭が貯蓄を取り崩していることから、さらに困窮度が高まっている世帯がいることも考えられ、継続的な支援が必要です。

利用世帯は、経済面・生活面で様々な課題を抱えており、物理的・精神的な理由から、一般的な支援に自らアクセスできない層が一定数存在します。こうした状況において、「周囲に知られずに食品を届け、定期的な見守りや状況に応じた必要な支援につなげる」というアウトリーチ型※のアプローチは、改めて有効性が高いことが確認されました。
実際、利用者からは「こちらから出向くのではなく、手を差し伸べてくださる事の有り難さを毎回感じています」といった声が上がっており、「待つ」のではなく「届ける」支援の重要性が裏付けられています。

※アウトリーチ:福祉分野において、「支援が必要であるにもかかわらず届いていない人に対し、行政や支援機関などが積極的に働きかけて情報・支援を届けるプロセス」のこと

②実行フェーズにおける評価:
引き続く物価高騰と米不足という厳しい状況の中、臨時便・増量便などの追加支援を継続
物価高騰が続き利用世帯の生活をさらに圧迫する中、こども宅食事務局としても物資の調達に苦心しましたが、通常配送に加え、「臨時便」や「増量便」などの追加支援を継続的に実施することができました。年度末で新しい生活の準備による出費がかさむ3月や、給食のない長期休暇が重なる8月に「増量便」を実施、追加支援を行うことで、ご家庭の負担が特に集中する時期に集中的に支援を届けることができました。2025年度は米不足という厳しい状況になりましたが、こども宅食の要でもある「お米」の調達にも注力し、継続してお届けすることができました。

追加支援を含む事業全体を通じて、利用世帯の約72%が食費節約(平均約4,600円)につながったと回答しており、さらに、食費が節約できたことで、生活に必需なものにあてた(57.0%)、他の食品を買った(54.8%)と回答する人も見られました。時期とニーズに合わせた追加支援を行うことで、家計の安定や食生活の充実などのアウトカムの実現を総合的に支えることができていると考えられます。

③効果の把握フェーズにおける評価:
年間11回、合計で205世帯へ様々な体験機会を提供~こども宅食で初の取組「寄付者と利用世帯 対面での食育イベント」を実施~
事業の効果(アウトカム)については、保護者・家庭の「食事内容、食に関する課題が改善される」、「心理的ストレスが減少する」、「食費の負担が軽減される」「助けを求めることができる」などの項目において顕著な結果が見られました。

「心理的ストレスが減少する」「支援者との接点が増える」などの事業の効果(アウトカム)につながる取り組みとして、企業・団体と協力し、体験機会の提供を実施しています。2025年度は計11回の体験機会提供キャンペーンを実施し、合計で205世帯へ様々な体験機会を提供しました。
特に、今年度は寄付企業と共同で対面型の夏休み食育イベントを実施したことにより、こども宅食を利用されているリアルなご家庭との共同作業を通じて、接点を持つことができました。
体験機会への参加が親子にとってリフレッシュの機会になり、心理的ストレスの軽減につながるとともに、支援への移行を促す重要な接点としても機能していると考えられます。

「助けを求めることができる」「リスクに気づいてもらえる機会が増える」などの事業の効果(アウトカム)につながる取り組みとしては、利用者の子育てや暮らしにおける困りごとを聞くチャット相談を運営しています。
2024年10月から2025年9月までの延べ相談件数は250件を超え、利用者の半数以上(51.6%)が「また相談したい」と回答するなど、高い満足度とニーズが確認されています。相談内容は「子育て・教育」に関するものが半数を占めるほか、制度利用、生活困窮、仕事・就労関係など多岐にわたりました。多様な課題を抱える利用者のニーズに寄り添い、保護者が助けを求めることができる場となっていることが伺えます。

日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科 准教授 新藤 健太 氏の総評

文京区こども宅食のアドバイザーを務めていただいている日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科 准教授  新藤 健太 氏からは、以下のような総評を頂きました。

新藤 健太 氏(本プロジェクトアドバイザー/日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科 准教授)

*アドバイザー・新藤 健太 氏コメント

第8期の文京区こども宅食プロジェクトのインパクト・レポートを拝見し、本事業が継続的に生み出している価値を改めて確認することができました。物価高が常態化し、利用世帯の厳しい生活状況が続くなか、食品配送に加え、見守り、情報提供、相談対応、体験機会の提供などを組み合わせた支援が継続されています。
今年度は、宅食の利用によって家庭の食事内容に変化が生まれたとする回答が昨年度の約71%から約75%へ、食費を節約できたとする回答が約68%から約72%へ増加し、平均節約金額も約3,588円から約4,600円へと増加しました。物価高が続くなか、食品を届けることが食生活を支えるだけでなく、家計全体を下支えする役割を一層強めていることがうかがえます。また、「社会とのつながりを感じる」「安心して生活できている」といった心理・社会的なアウトカムも昨年度をやや上回っており、これまで確認されてきた成果が今年度も安定して現れています。さらに、相談件数は200件超から250件超へ増加し、寄付企業とコンソーシアムが合同で対面型の食育イベントを実施するなど、利用世帯との接点も広がっています。
一方で、寄付企業・団体数や体験機会の提供世帯数には減少もみられます。今後は、限られた資源の中で、どの活動を重視し、どのアウトカムにつなげていくのかを検討しながら、支援の質と持続可能性を高めていくことが重要です。本事業が、評価結果を活用しながら「利用世帯の課題の重篤化を防ぐ」という最終アウトカムの実現にさらに近づいていくことを期待します。

2026年度、文京区こども宅食事業が目指すもの

私たちは、今回のデータをもとに、引き続き食品のお届けをきっかけにつながりをつくり、見守りながら、必要に応じて地域の社会資源にもつなぐことを目指して、事業の改善・進化に努めてまいります。

2026年度も、ふるさと納税の仕組みを使って文京区こども宅食の運営資金を募っています。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

食品とともに、「ひとりじゃない」を届けたい【文京区こども宅食】

https://www.furusato-tax.jp/gcf/5276

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