たくさんの人に支えられながら育ったと思ってほしい。福島の米農家が寄付を決めた理由とは

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2018.12.06

Megumi Kikukawa
菊川 恵
NPO Florence

NPO法人フローレンス所属。こども宅食広報担当。(Twitter:megumikikukawa

経済的に厳しい状況にあるご家庭に2ヶ月に1回、食品をお届けする「こども宅食」。

利用家庭に一番喜ばれるのは、なんといっても「お米」です。

配送の度に、このようなコメントが届いています。

「主食になるものから、お菓子まで入っていて、子どもたちも大喜びです! どれも嬉しい食材ばかりですが、やはり主食になる食材が一番嬉しいです」

「来てよかったと思う食材は、やはりお米です!必ず消費するものなのでありがたいです」

このように非常に喜んでいただける「お米」ですが、実はすべて企業や団体からご寄付いただいています。その一つが、福島県で農業を営んでいる、農業生産法人株式会社カトウファームです。ありがとうございます!

今回は、カトウファームを運営する加藤晃司さんと絵美さんに、お米づくりのこだわりやこども宅食にご寄付いただいた理由について、お話を伺いました。

IMG_0064 Square_1115022943加藤晃司さん
1979年 福島県 福島市生まれ。株式会社カトウファーム 代表取締役。四児の父。大学卒業後、スポーツジムのインストラクターや建築関係の仕事に従事。2009年に、祖父の跡を継ぐ事を決意し就農。震災後に繋がった県内三地域(浜通り、中通り、会津)の農家の仲間達と共に、各地域での人材育成や栽培を実現しようと奮闘中。

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加藤絵美さん
1981年 福島県 福島市生まれ。株式会社カトウファーム専務取締役。四児の母。2009年に就農し、震災を機に県外への発信を始め様々なイベントで登壇。2018年にB-eatJAPANを立ち上げ、県内外の生産者や農産物の発信を主に食に関する企画やイベントなどを開始。ベトナムでの催事も成功し、海外での活動も積極的に企画中。

 

――晃司さんはもともとサラリーマンだったと伺いました。脱サラして、農業をはじめたきっかけはなんですか?

晃司さん:僕の祖父が農家だったことがきっかけですね。福島市は果物農家が多いのですが、僕の祖父は米専門の農家だったんです。

祖父が農業を引退するタイミングで、脱サラして農業の道に進むことを決意しました。今から9年前、2009年のことですね。

その後、東日本大震災があって……。

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震災後は高齢化が進み、農業の担い手自体が減ってしまったんです。その頃からは「耕作放棄地を防ぎたい」という思いが強くなり、地域の田んぼを積極的に借り受けるようになりました。

今では、福島市内での田んぼの面積が、東京ドーム9個分の42ヘクタールに到達し、福島市最大の米農家になりました。

――東京ドーム9個分!想像もつかないような規模ですね。お米づくりをする上で、何かこだわりはあるのですか?

絵美さん:お米はすべて、減農薬で栽培しています。より良いお米が作れるように、日々肥料を変えながら作っていますね。

晃司さん:実は福島の水は、モンドセレクションという世界各地の食品や飲料を評価する取り組みの中で金賞をもらっている、品質の高い水なんですよ。

福島の良い水で作られていることに加えて、僕たちの田んぼは、グローバルキャップという世界的な認証を得ているので、お米の品質には自信がありますね。

また、福島県での方針に則って、お米を出荷しているので安全性も高いです。

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――福島県の方針とは、どういった方針でしょうか?

晃司さん:お米を出荷する前に、必ず検査を受けているんです。

まず、稲を刈った後に、玄米の状態で30kgずつ袋詰めします。
袋詰めした米は検査場に引き取られて、検査を受けます。その後、検査を通過したものだけが、手元に戻ってくる仕組みです。

検査の中で放射性物質が確認された場合、お米は手元に戻ってこず、販売できない仕組みになっています。

――検査が徹底された安全なお米なのですね。ご家庭にお届けする際に、食品寄付を担当している一般社団法人RCFから「福島のカトウファームさんからお米をご寄付いただくことになった」というお手紙を入れたんです。

すると、それをご覧になったご家庭から、「カトウファームさんを応援しています!」「一粒残さず食べます!」などのコメントをいただきました。

絵美さん:こども宅食を利用しているご家庭に、私達のお米を受け入れてもらえたことが本当に嬉しいです。

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私も一人の母親として、主食である「お米」が生活をつなぐ中で本当に大切だと思っています。

私たちには、子どもが4人いて、日々実感していることなのですが……。中学生や小学生くらいの育ち盛りの子どもたちって、本当によく食べるんですよね。

――ご家庭からも「食費がかさんでしまうので、食品を届けてもらえると助かる」という声をよく伺います。

晃司さん:少しでも力になれたなら、本当に嬉しいです。

自分たちが子育てに奮闘しているからこそ、お役に立てるのであれば、協力したいと思ったんですよね。

一人でも多くのお子さんや、そのご家族が満たされたらいいな、と思っています。

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絵美さん:実は……寄付するにあたって、迷いもあったんです。福島のお米が受け入れてもらえるかなって。

それに、私たちも子育てと農業の両立に精一杯で、決して余裕があるわけではありません。

それでも、一人でも喜んでくれる人がいるのであれば力になりたい!と思って、寄付することに決めたんです。

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絵美さん:あとは、食品を受け取っていることを「かわいそうなことだ」とマイナスに捉えないでほしいな、と思います。

むしろ、「たくさんの人に支えられながら育った」と誇りに思ってほしいです。

欲をいえば、農業にも興味を持ってもらえると嬉しいですね。

――こども宅食が少しでも、子どもたちの育ちや保護者の皆さんの支えとなれるように、これからも事業を運営していきます。ありがとうございました!

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