地元の特産米で都市部の親子を支え、農家にも喜びを!島根県津和野町が挑む「地方と都市の新しい連携」
島根県西部に位置する「津和野町」は、文豪・森鴎外の生誕地でもあり、城下町の名残を感じる美しい街並みが魅力です。「山陰の小京都」とも呼ばれます。
津和野町では、清流・高津川が育む自然豊かな環境で、町の特産品である「特別栽培米 ヘルシー元氣米」(以下、ヘルシー元氣米)を生産しています。このお米は、化学肥料や農薬の使用を抑えた環境に優しい農法で育てられた特別栽培米で、地域の農家が丹精込めて育てています。津和野町は、文京区こども宅食との交流事業においてお米を寄付する全国唯一の自治体として、2020年から年2~3回のペースで寄付を行い、これまでに約13トンのお米を届けてくださいました。寄付は「都会で困っている子どもたちを支えたい」という思いから始まり、津和野町から送られたお米は家庭の食卓を支えています。
お米の寄付に寄せられた利用者からの喜びの声や、ヘルシー元氣米の魅力、今後の展望について、津和野町つわの暮らし推進課課長 宮内秀和さん、横田雄一さんにお話を伺いました。
(左:宮内さん、右:横田さん)
水質日本一!清流・高津川が育むヘルシー元氣米
― 津和野町の魅力をお聞かせください。
横田さん:津和野町は、島根県西部、山口県との県境に位置する歴史と自然が調和した美しい町です。この町は、文豪・森鴎外や西洋哲学を日本に広めた西周といった文化的に重要な人物を輩出しています。また、江戸時代の町並みを色濃く残し、伝統的建造物群保存地区に指定されています。森鴎外記念館や太皷谷稲成神社などの名所が点在し、多くの観光客を魅了しています。
宮内さん:町のもう一つの魅力は、水質日本一に8回輝いた清流・高津川です。この清流は、アユやツガニ、わさびなどの特産品を育むだけでなく、農業にも欠かせない役割を果たしています。高津川の水を利用して育てられる「ヘルシー元氣米」は、化学肥料や農薬を抑えた環境に優しい農法で栽培されており、その美味しさから地元だけでなく都市部の消費者からも高く評価されています。
「ヘルシー元氣米」で繋ぐ都市と地方の絆
―「ヘルシー元気米」について教えていただけますか?
横田さん:「ヘルシー元氣米」は、津和野町の農家が循環型農業によって栽培している特別栽培米です。このお米は牛糞堆肥を使い、田んぼの微生物を活性化させることで、化学肥料や農薬の使用量を減らした環境に優しい方法で育てられています。こうして、安全で健康的な食品として消費者に届けることができています。香り豊かでしっかりとした食感が特徴で、美味しさにも高い評価をいただいています。
2020年から、津和野町では「ヘルシー元氣米」を文京区の「こども宅食」に寄付する活動を始めました。この取り組みは、津和野町で育てられたお米が都市部で暮らす困難を抱えたご家庭を支援するだけでなく、寄付を通じて地元農家のやる気を引き出す役割も果たしています。さらに、農業と福祉を結びつけることで、都市と地方の新しい交流の形としての役割を果たしています。
―津和野町がこども宅食にお米を寄付しようと思ったきっかけを教えてください。
横田さん:津和野町と文京区には、文豪・森鴎外の生誕地と終焉地という文化的な繋がりがあります。これをきっかけに、両地域は文化振興や災害支援などで協定を結び、津和野町東京事務所(Tsuwano T-SPACE(東京都文京区小石川2-25-10))を拠点に連携を深めてきました。一方で、津和野町はお米離れやコロナ禍、高齢化、土作りコストの増加などの課題を抱えており、農家の減少が大きな問題となっていました。
こうした中、文京区から「こども宅食」事業の相談があり、2020年からお米の寄付を始めました。この取り組みは、都市部と地方、さらには津和野町が行うクラウドファンディングへの寄付者がそれぞれメリットを感じられる循環型のプロジェクトです。津和野町のヘルシー元氣米の栽培に必要な費用の一部は、クラウドファンディングによる寄付でまかなっているんです。津和野町のお米は文京区の家庭の支援に役立ち、寄付金は津和野町の土作り支援に充てられ、寄付者には返礼品としてお米が届けられます。これにより、都市部の貧困家庭支援、地方の農業活性化という双方が抱える課題を同時に解決し、新しい連携の形を生み出しています。
「作ったお米が都会の子どもたちの役に立って嬉しい」
農家から寄せられる喜びの声
― ヘルシー元氣米の寄付に対して、農家さんからどのような反響がありましたか?
宮内さん:津和野町のお米は、特に高齢の農家さんたちが主な担い手となっています。町では70代や80代の農家が多いのですが、「自分たちが作ったお米が都会の子どもたちの役に立っている」と実感できることが大きな励みになっています。2020年に寄付が始まって以来、多くの農家が「やりがいを感じる」と話し、米作りへの情熱がさらに深まったという声を聞いています。
―お米の寄付を受けた文京区のご家庭からは、「物価が高騰し、米が手に入りにくくなっている中でとてもありがたい」や「夏休みの給食がなくなる時期に、米の寄付が大変助かっている」といった感想をいただきました。どう思いますか?
宮内さん:文京区の成澤区長が津和野町に来られたときに、都内におけるこの夏の米不足に関する困難な状況についてお話がありました。そうした中、子どもたちやそのご家庭が少しでも喜んでいただけたのなら、私たちは本当に嬉しいです。
横田さん:今年はお米の不足や物価高騰が続き、困窮している方々が多いと実感しました。「こども宅食」の事業が、そうした方々への支援につながればと願っています。
文京区の利用者から寄せられた感想
「宅食便いつもありがとうございます。お米が1番助かっています。」
「お米がどこのお店も在庫切れで購入できず困っていたので、すごく助かります。」
「夏休みを控えて給食が無くなる中、親は2人とも就労しており、ご飯さえあれば!と思うのでお米はほんとにありがたい。」
「お米は必ず食べるものなので、とても助かっています。」
こども宅食支援を続けるうえで感じる課題
―「こども宅食」プロジェクトを支援する中で、感じられる課題はありますか?
宮内さん:一番の課題は、2024年問題の影響による輸送コストの増加です。文京区こども宅食向けには、農協経由で2キロ単位に小分けをしてパッケージングをしています。しかし、2キロは一般的な5キロや10キロと比べて手間と費用がかかるため、負担が増しています。また、津和野町の農業自体が高齢化と後継者不足といった問題を抱えており、農家さんへの負担を軽減しながら支援を続けることが必要だと考えています。
―包装と輸送コスト増の解決に向けて、どのような取り組みを行っていますか?
宮内さん:輸送費や生産コストの負担を減らすため、クラウドファンディングやふるさと納税を活用して資金を集めています。また、寄付金を活用してお米の生産に必要な土作りを支援し、農業を持続可能な形にする努力も続けています。今後も町全体で課題を共有し、長期的に事業を続けるための工夫を模索していきたいと考えています。
都市と地方がともにハッピーになれるような社会へ
―今後、どのような活動を展開したいとお考えでしょうか?また、活動を検討している団体へのメッセージをお願いします。
横田さん:津和野町と都市部が連携し、それぞれの課題を解決する関係をこれからも築いていきたいと考えています。津和野町の農家は後継者不足や高齢化、さらに土作りコストの増加といった問題に直面しています。一方で、都市部では貧困により十分な食料を確保できないご家庭が増え、昨今の物価高騰がその影響をさらに深刻化させています。都市部への食支援を通じて、津和野町では農業の活性化が進み、地域が持続可能な形で発展していけると信じています。
宮内さん:活動を継続することで、より多くの方に私たちの取り組みを知っていただけると期待しています。ふるさと納税が注目されている今だからこそ、都市と地方が連携する新しい形を作り上げたいです。お米をきっかけに、都市部と地方が抱える課題を同時に解決する「循環型プロジェクト」に発展させたいと考えています。
▼津和野町クラウドファンディングの詳細はこちら
「こども宅食プロジェクト」循環型の減農薬に取り組む米農家を支え、困窮家庭の子どもにも米を届けたい
writing:薗部雄一
今年は寄付目標金額の達成が非常に厳しい状況です!
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今年も残すところあと少しですが、目標金額の達成が非常に厳しい状況です。
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