こども宅食に図書カードを寄付。添えられた手書きのメッセージに込めた想いとは?
「進級・進学おめでとう」「勉強を頑張ってね」。
スマホやパソコンの文字を目にする機会が多くなった子どもたちにとって、手書きは新鮮で温かさを感じさせてくれます。ちょっとした一言でも、気持ちがより伝わってきますよね。
今年3月、青少年の教育や育成に取り組む「東京本郷ロータリークラブ」さまは文京区こども宅食利用世帯に手書きのメッセージを添えた図書カードを寄付してくださいました。
子どもたちへのメッセージは、新生活を応援する言葉や四字熟語のほか、「本をたくさん読んでね」といった一言までさまざま。メンバーが、受け取る子どもたちを思い浮かべながら丁寧に書いてくださいました。
ただ図書カードを贈るのではなく、そこに手書きのメッセージを添えた背景には、どのような想いがあったのでしょうか。
東京本郷ロータリークラブ会長の松岡浩(まつおかひろし)さん、創立30周年記念事業実行委員会 実行委員長の櫟本健夫(とちもとたけお)さんに伺いました。
青少年の教育に一貫して取り組んできた
ーー本日はよろしくお願いいたします。寄付について詳しくお話を伺う前に、ロータリークラブとはどのような団体なのかのほか、ご活動内容について教えていただけますでしょうか。
松岡さん:ロータリークラブとは、国際的な社会奉仕連合体である「国際ロータリー(Rotary International)」に加盟する単位クラブのことで、世界の200以上の国と地域に約36,000のクラブ、約118万人の会員がいます。もともとは、会員が集会(現在では「例会」と言います)を各自の事務所持ち回りの輪番制(英語でrotary=ロータリー)で行っていたことから、この名がつきました。
奉仕活動の中身は多岐にわたります。今年度(2020-2021年度)は、東京本郷ロータリークラブのクラブ創立30周年の節目の年にあたることから、創立30周年記念事業実行委員会を立ち上げ、記念事業として地域の為に貢献できる奉仕活動を皆で考えました。図書カードの寄贈は、まさにこの記念事業の一環として行ったものです。
ちなみに会員数は50人。平均年齢は70歳くらいですかね。30代から90代までの幅広い年代・様々な職業の会員がいます。会員の職業としては、企業経営者、弁護士、医師、公認会計士などです。
ーー世界中で奉仕のお取り組みをされているのですね。同じ支援者という立場から見て、そうした姿勢は素晴らしいと感じました。
松岡さん:私たちが特に力を入れてきたのが、「青少年の健全育成」です。文京区は、「文の京」と書くように、東京大学をはじめ教育機関が多く教育熱心な場所です。一例をあげますと、区の教育委員会と協働して、区立中学校に通う中学生向けの「職場体験発表会」を毎年実施してきました。「職場体験」とは、(中学生に)社会の一員としての自覚を促すとともに望ましい社会性や勤労観・職業観を育成しようとする場です。そのような職場体験の前後で職業観がどう変わったかなどを中学生が話す「職場体験発表会」の司会進行を私たちが務めました。
※「文京区立中学生の職場体験発表会は、2020年1月31日の開催をもちまして終了しました。永年の取り組みに対して東京都より感謝状をいただきました。
櫟本さん:また青少年の成長には保護者への教育も必要との考えから、保護者向けに「新世代会議」というイベントも実施しています。テーマを決めて講師を招き、講演を行うものです。ご家族が子育てで孤立していないか、私たちに何かできることはないかとの想いもこめて開催しています。
あとは、東日本大震災の被災地である東北地方に住む小学生を東京ドームに招いて、野球大会を開いたこともありますね。
ーー東京ドームで野球ができるなんて、東北の小学生たちの笑顔が目に浮かびます!
新型コロナでイベントが中止に。活動を見直す中でこども宅食を知った。
ーー昨年から新型コロナウイルスが国内で流行し、東京本郷ロータリークラブさまのご活動にも影響が及んでいるのではないかと思います。そのような中で、文京区こども宅食に寄付をするにいたった経緯を教えてください。
櫟本さん:文京区の成澤区長から教えていただいたことがきっかけです。新型コロナウイルスの流行で、先ほどご紹介した「新世代会議」をはじめ、多くの活動をストップせざるをえなくなってしまいました。正直なところ、影響はかなりあります。
何かをするにもメンバーが一堂に会して話し合いにくい状況ですしね。無理に活動をするのではなく一度立ち止まり、地域や青少年のために自分たちは何ができるかをあらためて考え直そうと区長に相談へ行きました。
私たちが掲げる青少年、奉仕、地域の3つの考えをもとに奉仕を続けるにはどうすればいいのかをお話したところ、区長から「こども宅食はどうでしょうか」とご紹介いただいたのです。
ーー成澤区長からのご紹介だったのですね!こども宅食について、どんなことを感じられましたか。
松岡さん:区内のニーズに合った事業だなと感じました。文京区は教育に力を入れる親御さんが多い土地柄ですが、ご家庭の経済状況によってはお子さんに思うように教育を受けさせられない方もいます。
こうしたお子さんたちのために、無料の学習支援室があるのですが、通っていることを周りに知られたくないがゆえに、お子さんが行きにくい空気があると区長から伺いました。たしかにその気持ちはわかります。
一方でこども宅食は、子どもが特定の場所に出向くのではなく、支援をご自宅に届ける形をとっていて、親御さん、お子さん双方への配慮がされています。
さらに食品を通じてサポート提供側が利用者とつながりを持ち、専門家への紹介をはじめとしたさらなる支援を行う点も良いと感じましたね。
ちょうど創立30周年のタイミングでもあり、記念事業として、私どもも寄付をすることにいたしました。
好きな本を買って、楽しんでほしい。
ーーそうおっしゃっていただけて、嬉しいです。こども宅食は利用者ご自身が自治体や支援者の窓口に出向くのでなく、直接ご家庭に食品を届ける事業です。
こども宅食への寄付品は食品が多い中で、東京本郷ロータリークラブさまが図書カードを選ばれた理由をお教えください。
櫟本さん:食べ物の寄付が多いと聞いていたので、私どもはちょっと違ったものをお届けしたいと思っていました。
図書カードであれば、これまで買いたくても買えなかったものを購入できるのではないかと思い、図書カードを寄付することにしたのです。
私たちは青少年の教育に力を入れてきたと申し上げましたが、買う本は参考書や勉強に関するものだけでなく、漫画でもいいのですよ。
お金がなくて欲しいものが買えず我慢をしていた子どもたちが、図書カードで好きな本を買うことで楽しんでもらいたい。それが私たちの望みです。
ーーこども宅食としても、普段お届けしている食品に加えて図書カードをお渡しできたことが嬉しかったです。図書カードに手書きのメッセージを添えられた背景には、どのような想いがあったのでしょうか。
櫟本さん:モノを用意して、「はい、どうぞ」とお渡しするよりも、受け取るお子さんを思い浮かべながら一言でも何かメッセージを寄せたいと思ったからです。
図書カードを入れる封筒がありますよね。封筒に貼ったシールに、クラブのメンバーがそれぞれ好きな言葉を書きました。たとえば、「頑張れ」だとか、「本を読んで知識を蓄積してください」みたいな感じです。
私は四字熟語を書いたかな。やっぱり、印刷された文字に比べると手書きには温かみがあるじゃないですか。手紙をもらうと、なんだか幸せな気持ちになりますしね。
支援活動で大切な「やめどき」
ーー手書きメッセージ付きの図書カードを受け取ったご家庭のお子さんたちはとても喜んでいます。本当にありがとうございました!最後になりますが、東京本郷ロータリークラブさまが活動で大切にされていることや今後取り組んでみたいご活動があれば、教えてください。
松岡さん:地域の課題やニーズに合ったものを提供するのが一番大切です。求められていないことをしても、ただの独りよがりや自己満足になってしまう恐れがあると考えるからです。地域でいま何が求められてるのか、何が足りないのかを知る必要があります。
今回の寄付も、周年事業を担当するクラブメンバーが文京区長のところまで足を運び、区長から現状を伺ったことで実現しました。今後もこうした努力を怠らずに奉仕を実践していきたいです。
あとは、奉仕活動の「やめどき」を意識する場合もあることを付け加えておきたいと思います。
もちろん、どのような奉仕活動であっても継続を前提とはしていますが、同時に先輩方より教わった「やめどきを考えることも大事だよ」との言葉も意識して奉仕活動に取り組んでいます。
新世代会議や職場体験発表会のように毎年実施する継続事業もありますが、「~東北の子供たちに夢と希望を~ 東京ドーム少年野球大会」のように「3回で終わりにする」と回数を初めから決めてスタートするプロジェクトもあります。
これは私なりの解釈でもあるのですが、「やめどき」を意識するというのはこういうことだと思うのです。私たちが何かを始め、他の誰かが私たちの活動を引き継いでいくこと。そして、私たちはまた新たな奉仕活動を開発し、実行する。この循環が私たちの奉仕の一つの形であり、世の中を少しでも良くするのではないかと。
ーー「支援はやめどきが大切、自分たち以外の誰かに引き継いでいく」。東京本郷ロータリークラブさまの中にあるそうした考えが心に響きました。今回は、こども宅食に素敵なメッセージ付きの図書カードをお贈りくださったことに心より感謝しております。本日はありがとうございました!
writing:薗部雄一
最後に今回の企画についてご家庭からいただいたメッセージを一部紹介します
(ご家庭からいただいた感想を一部加工して掲載しています)
図書カードを受け取りました。
大変有難い思いと同時に、直筆のメッセージに心が温まりました!
本郷ロータリークラブ様のご厚意はもちろんのこと、こども宅食事務局の方々、関係各所の皆様に心よりお礼申し上げます。
近々、子どもと本屋さんへお気に入りの本を探しにまいりたいと思います!
本当に有難うございました。
図書カード届きました。ありがとうございます。
本郷ロータリークラブの方に感謝です!
こどもの日に買ってあげると約束しましたが、頂いた図書カードで買う事で、感謝と本を大事にする気持ちを伝えたいと思います。
図書カードが届きました!とっても嬉しいです♪
うちの子ども達は本が大好きなので、大事に活用させていただきます。
本郷ロータリークラブ様。
温かなメッセージ付きの図書カードをありがとうございましたm(__)m
引き続きのご支援をお願い致します!
2021年度のふるさと納税による寄付の募集がスタートしました!
こども宅食は、文京区の経済的に厳しいご家庭に、食品をお届けすることでつながり、見守り、必要な支援につなげていく取り組みです。
2021年も、より良いこども宅食にしていけるよう、スタッフ一同力を合わせて取り組んでまいります。
皆様のあたたかいご支援をお待ちしております!