「絵本で親子の時間と笑顔をつくる」こども宅食の配送会社と小さな絵本屋がやりがいを語ってくれました

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2022.04.20

こども宅食事務局

こども宅食事務局が、こども宅食の歩みや、子どもの貧困についてのニュースをお届けします!

文京区こども宅食は昨年12月、こども宅食を利用する家庭に食品を配送するタイミングでクリスマスプレゼントとして絵本をお届けしました。
この取り組みは2018年にスタートし、昨年が4回目。絵本を受け取った親子からは、「子どもがとても喜んでいました」「クリスマスプレゼントとしてツリーの横に飾ってから読みました」といった喜びの感想をいただいています。

絵本を寄付し続けてくださっているのは、東京都文京区にある株式会社ブギさん。同社はネット古本店「本棚お助け隊」と小さな中古絵本店「OSAGARI絵本」を運営し、絵本の魅力を伝えています。

2019年からは、こども宅食で食品の配送を担う「ココネット株式会社」さんも取り組みに参加。ブギさんが寄付した絵本をココネットさんがお届けする体制ができあがり、支援の輪が広がりつつあります。

ブギさん、ココネットさんは絵本のプレゼントを通じてどんなことを感じているのか。本を受け取る親子に喜んでもらうために心がけていることのほか、今後取り組んでみたいことなどについて株式会社ブギの伊藤さん、ココネット株式会社の飯塚さん、田島さんにお話を伺いました。

お子さんがニコニコして絵本を手に取る姿を見て、「もし自分の子だったら…」と考えてジーンとする

ーー2018年、ブギさんが絵本の寄付を申し出てくださったことで始まった絵本プレゼントの企画。おかげさまで、4回目を迎えることができました。いつもご協力くださって、ありがとうございます!

伊藤さん:もう4回目と聞くとびっくりですが、「こども宅食を利用するご家庭に絵本のクリスマスプレゼントを贈る」というのは、今では弊社の年間事業計画に組み込まれているんですよ。
開始当初は事前に利用家庭にアンケートをお配りし、お子さんの年齢や本の好みなどを伺って、希望に近い絵本をお送りしていました。つまり申込制でした。でも、2019年の2回目からはココネットさまが協力してくださることになったので、利用者さんなら誰でも受け取れる形に変えました。
弊社がまとまった数の絵本を用意してココネットさんにお渡しし、食品と一緒にお届けいただくというやり方です。ハーティストさん(配達担当の方)が15冊程の絵本を専用コンテナに詰め替えて各ご家庭に運んでくださるので、お子さんと親御さんが玄関先で絵本を選べるようになりました。なかには図鑑などもあるので配達時の重さが心配でしたが、ココネットさんが「子ども達が喜んでくれるから、(重いのは)大丈夫ですよ!」と明るく言ってくださったのが有難くて。
配送ごとに絵本をアソートしたり、絵本が詰まったコンテナをご家庭まで運ぶ手間をココネットさんがご快諾くださっているからこそ、こども宅食の利用者さんであれば絵本を配送時に受け取れるという形が実現できています。

飯塚さん:絵本をお届けした私たちも素敵な気分になれて、今回もご一緒できてよかったなと感じました。配送先でお子さんがニコニコしながら絵本を手に取る様子を見たとき、「もし自分の子どもだったら」なんて考えてジーンとしてしまいましたね。
絵本は親子にとって身近な存在ですが、頻繁には買わないと思います。それに、何度も読むことで登場人物のセリフを覚えてしまうし、ストーリーもわかりきってしまう。なのに何度も読み返したくなる。絵本には、そんな不思議な魅力があると私は思います。田島さんはどう思いますか?

(ココネット株式会社 田島さん)

田島さん:私は保育士の経験があるのですが、子どもに読み聞かせをしていて、「この内容にはこんな学びがあるのだな」と大人になってあらためて気づくことがありました。
大人になってから読むからこそ、理解できることがある。きっと誰もが、大人になっても好きな絵本はあると思うんです。そう考えると、絵本には卒業する年齢がないのかもしれません。

 

仲間が増え、支援活動の輪が広がっていくのは嬉しい

ーー伊藤さんにお伺いします。ココネットさんが絵本のお届けの部分を担ってくださっていますが、他の企業さんと協力して企画を進めるときのお気持ちを教えてください。

伊藤さん:先ほど飯塚さんが「絵本をお届けした私たちも素敵な気分になれる」とおっしゃってくださったのを聞いて、泣きそうになっています。私たちはいつも「古本で何ができるか、どんなお役に立てるのか」を考えてきましたが、当社は小さい会社ですのでできることにも限りがあります。
ですから、ココネットさんのように思いを共にできる方の存在は心強いですし、支援の輪が広がって嬉しいです。組織の垣根を越え、ビジョンを根っこの部分で共有できるチームとして、一緒に活動する。とても素敵なことだなと思います。

ーー文京区こども宅食としても、毎年みなさんとチームを組めて嬉しく思います!ココネットさんは、「こども宅食を利用されるご家庭に絵本をプレゼントしたい」というブギさんの想いについてどう感じられたのでしょうか?

飯塚さん:「ブギさんってどんな会社だろう?」と気になって、ネットで調べたことがありました。絵本をプレゼントをしようとした経緯のほか、伊藤さん、代表の菅原さんのお人柄を記事を通じて知り、ご一緒できること嬉しく思いました。
当社では配達を担当するスタッフを「ハーティスト」(Heart 心 +ist 携わる人)と呼んでいます。読んで字のごとく、真心をもってお客さまに向き合っていく気持ちをハーティスト一人ひとりが持っているんです。
食品はもちろんのこと、ブギさんの気持ちがこもった絵本も、心を込めてお届けしています。

伊藤さん:ありがとうございます。私も代表の菅原と、ココネットさんのお話をよくするんですよ。
ハーティストさんたちが、いつもご利用者様の気持ちに寄り添ってお仕事をされる姿に感銘を受けています。
御社は、ご高齢や子育て中など、買い物のために外出をしづらい方たちの力になりたいという気持ちで創業されたと、以前お聞きしました。「“コ”ミュニティ・“コ”ンシェルジュ・“ネット”ワーク= 準家族」が社名の由来と知って、なるほど!と思いました。

「荷物を直接受け取ってもいいかな」と思ってもらえる接客を心がける

ーーここからは話を少し変えて、配送や接客の現場についてお伺いしたいです。
こども宅食では配送をきっかけにご家庭とゆるやかにつながり、見守りをすることも大切にしています。2020年からコロナ禍が続いていることもあり、こども宅食での配送や絵本のお届けで大変だなと感じることはありますか?

飯塚さん:2020年は1回目の緊急事態宣言が出たり、一斉休校や保育園、幼稚園の臨時休園などがあったりと、感染への不安感が特に強い年でした。なので配送に伺っても、会っていただけないケースが目立ちました。
私たちのような配送業者は警戒されがちで、荷物の受け取りは対面でなく、「置き配でお願いします」とリクエストされる方もいらっしゃいました。一方で2021年は引き続き感染リスクはあるものの、「誰にも会わない暮らしにみなさん疲れているな」という印象を受けます。

ーーずっと家にいる、誰とも話さない暮らしにも限度がありますよね…。

飯塚さん:そうですね。ずっとお家で過ごすのは気持ち的につらく感じる方もいるので、感染状況をニュースでチェックをして、衛生面に注意したうえで人に会う選択をする方もいますよね。
配送先でも、以前は置き配が多かったですが、最近では玄関のドアを開けて直接受け取られる方もいます。ただ誰とでも対面するわけではなく、「この人なら受け取ってもいいな」と思った場合にのみ扉を開けてくれる。
「会ってもいいな」と思う人に会い、「この人は会わなくていいかな」と感じた人には、置き配で対応する。インターホン越しのやり取りで、そんな判断をされているように思います。
だからこそ、ピンポンを鳴らして応答された際には、お住まいの方に「ドアを開けてもいいかな」と思ってもらえるよう、第一印象を大事に、マスク越しでも伝わる様な笑顔や、安心頂ける様に声のトーンにも気を付けるなど想いをもって対応する様に気をつけています。

伊藤さん:私たちも、お客様から「子どもの発達や親子のメンタルを考えると、おうち生活ばかりをずっと続けるわけにもいかないよね」といったお声を耳にすることが増えました。
飯塚さんがおっしゃったように、感染の状況を見て外出するかしないか、会うか会わないかを都度決めるというやり方にシフトしつつあるのかなと感じます。

「ありがとう」を言われることが、力になる

(ココネット株式会社 飯塚さん)

ーー大変な中で配送やご活動をしてくださり、本当にありがとうございます。コロナ禍での活動で心がけていることはございますか?

飯塚さん:先ほど私もお伝えした通り、少しでも「会ってもいいかな」と思ってもらえるよう、清潔感をはじめとした第一印象は大切にしています。初めてお届けにいくご家庭ですと、なかなかドアを開けていただけないことが多いです。「そこ置いておいて」と言われることがほとんどです。
でも、何度か訪問をし、繰り返し接していくとだんだんと信用していただけるようになる。すると以前は対面で受け取られなかった方が、直接受け取ってくださるようになるケースもあるんですよ。

伊藤さん:感染症の流行が始まった2020年は私たちも不安の日々でした。未知のウイルスに対し、お客様とスタッフの安全をどのように守れるのかと。同年3月には全国に緊急事態宣言が出され、当店も1度休業したことがあります。
それ以降は、感染状況によって入店制限をしたりしながらお店を開けています。私たちが扱っているのが「中古本」ということもあり、お客様にできるだけ安心してご利用いただけるよう店内の衛生管理や接客をする自分たちの清潔感には、特に気をつけています。

飯塚さん:ご質問のコロナ禍の配送で心がけていることとは違う回答になってしまうのですが、荷物を受け取られる方が心を開いてくださることは、私にとって仕事を続けるモチベーションになります。こども宅食での配送でも、最初は「この人誰?」という表情で見つめていたお子さんが、お届け回数を重ねていくうちに「お菓子は入っているかな?」と嬉しそうに質問してくれるようになる。
それに、利用者さんから感謝をされるんですよね。日常生活でここまで「ありがとう」を言われることはなくて、配送先のご家族から力をもらっています。

 

絵本に卒業の年齢はない。親御さんもお子さんも楽しめる絵本との出会いをサポートしたい

(株式会社ブギ 伊藤さん)

ーー絵本のプレゼント企画は毎年改善を繰り返して4回目を終了しましたが、「次はこうしてみたいな」と感じることはありますか?

伊藤さん:これまでは小さいお子さん対象の絵本がメインだったので、4回目では小学生のお子さんが読める本もあるといいかなと思い、児童書など絵よりも字が多い本を加えました。新たな試みだったのですが、それでもまだ「年齢に合う絵本が残っていなかった」などのフィードバックをいただいたので、5回目ではこの点を改善できたらいいなと。あとは、知育玩具のようなちょっとしたおもちゃを絵本に添えるのもいいかななんて考えています。

飯塚さん:私が現場で感じたことは、配送先で絵本を選んでもらう形だと、どんどんと本の数が減ってしまうことです。後からお伺いするご家庭は選択肢が狭くなってしまうのですが、できるだけ希望の絵本を選べるようになるとよいですよね。
あとは、親御さんが「もう子どもが絵本は読まない年齢なので大丈夫です」とお断りされることがあり、絵本は年齢限らず楽しめる部分があると思うので、お渡しできたら良かったな、どのようにお話したら受け取ってもらえたかなと思うことがありました。

伊藤さん:絵本は本当に奥が深く、例えば1年生のときに読んだ絵本を5年生で読み返したら、全く違う発見があった、ということもあるかと思います。それから、お店では、大人の方が「懐かしい」といって、ご自分用に絵本をお求めになられることもあります。先ほど田島さんがおっしゃっていた「絵本に卒業する年齢がない」というお話は、本当にそうだなあと思います。
また、絵本選びに悩まれる親御さんも多いので、何かヒントになるようなご提案ができるといいのかな、とも思います。例えば、よくいただくご質問が「子どもと自分(親)の好みが違う場合はどうしたらいい?」というものです。

ーー読み聞かせをするとなると、親の好みから外れすぎた本では絵本の時間が楽しくなくなってしまうかもしれないと思うと、どのように絵本を選ぶべきか悩ましい気持ちはすごくわかります

伊藤さん:私もお店で絵本選びをお手伝いさせていただく際にはお子さんだけでなく親御さんのお気持ちにも寄り添えるよう心がけています。自分自身、子どもがもっと小さかったころは「これでいいのかな?」と迷いながら絵本選びをしていたので。
お客様には「これが正解!」というのではなく、「こんなやり方もあるよ」「こんな考え方もあるよ」というようなお話をしています。その中で、大人目線での絵本の楽しみ方をお伝えすることもあります。
次回は、年齢に関わらない絵本の楽しみ方が伝わるようなメッセージカードを添えてもいいかもしれませんね。

 

クリスマス以外にも絵本の魅力を発信し、親子が絆を深める時間をつくりたい

飯塚さん:絵本の魅力をもっと知って欲しいですよね!今のところ年に一度のイベントですけど、それ以外にも何らかの形で年間を通して発信できたら最高じゃないですか!?ブギさんはお店だけでなく、たとえば移動販売のような形で絵本の楽しさを伝えたり、販売したりはしていないのでしょうか?

伊藤さん:お仕事で忙しい親御さんに向けて、たとえばお昼休みのような時間帯に絵本の移動販売ができたらいいなと思っています。コロナ禍以前は公園の定期マルシェで絵本の出張販売をしていたのですが、「いつも忙しくてなかなか本屋さんに行けないけど、子どもと公園に来たついでに絵本を選べて嬉しい」と、まとめ買いしてくださる方も結構いたんですよ。でもなにぶん、スタッフ数に限りがあり、マンパワーが足りない…。

飯塚さん:ココネットの配送と仕分け、準家族としてお客様に寄り添う接客を活かし、こういった働きにご協力できればと思います。

伊藤さん:ありがとうございます、心強いです!今後もココネットさんと一緒に、文京区こども宅食の利用者さんに絵本のクリスマスプレゼントをお届けする企画を続けていきたいのはもちろん、他にも絵本の魅力を伝える活動などでもご一緒させていただけたら心強いです。

writing:薗部雄一

 

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