貧困が子どもから奪うものとは、何か?
【子どもの貧困】

こども宅食事務局

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日本では「子どもの貧困」と聞いても、正直ピンと来ない方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。日本は、世界的に見ても経済的に豊かな国と認識されていて、自分の周りにも、住む場所や食べるものに困っている子どもはほとんど見かけないという方もいるかもしれません。しかし実際、厚生労働省が発表した「2022年 国民生活基礎調査の概況」によると、日本の子どもの貧困率は11.5%で、約9人に1人の子どもが貧困状態にあると言われています。

日本における子どもの貧困とは

そもそも、貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類があります。
「絶対的貧困」とは、人間として最低限の生活をいとなむことができない状態のことを指します。つまり、衣食住がままならない状態のことを意味します。
一方、「相対的貧困」とは、国民の年間所得の中央値に満たない所得水準の人々のことです。簡単に説明すると、平均的な世帯に比べて生活に使えるお金が半分以下というイメージです。

日本における子どもの貧困とは、この「相対的貧困」を指しており、衣食住はギリギリ満たすことができるが、満足の行く食事や教育を受けることができない子どもたちが多く存在しているのです。しかしながら、「相対的貧困」は外見だけではその認知が難しく、日本においては子どもの貧困は見えにくいというのが現状です。

貧困は子どもにどのような影響を及ぼすのか

「衣食住にそこまで困っていないなら、大騒ぎする必要はないのでは?」そう思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、本当に問題になるのは、収入の多い少ないではありません。経済的に厳しい環境が、子どもに及ぼす影響こそが問題なのです。
では、そういった環境には具体的にどんな問題があり、子どもにどのような影響があるのでしょうか。

「自分だけできない」が自己肯定感を低下させる

経済的に厳しい家庭では、一般的な家庭で普通にできることが、なかなか実現できないこともあります。服やおもちゃを買えない、家族で旅行に行けない、塾や習い事に通えない…それらは家庭の経済状況が原因であり、子ども本人にできないことの原因があるのではありません。
にもかかわらず、「周りの友だちはできているのに、自分だけできない」という環境に置かれることによって、子ども自身の自己肯定感は下がってしまうのです。

実際、2023年の「岐阜県子ども調査」(p4)によると、「自分は価値のある人間だと思う」という自己肯定感について、「そう思わない」「あまりそう思わない」と回答した子どもたち(小学校5年生)の割合は中央値以上の所得がある世帯が26.5%だったのに対し、低所得世帯は約1.8倍の46.8%でした。

出典:令和5年度 岐阜県子ども調査

また2020年に東京都大田区が行った「大田区子どもの生活実態に関するアンケート調査」(p37)においても、「自分は価値のある人間だと思う」か否かについて「とても思う」「思う」の回答が、非生活困難層で59.7%、生活困難層で50.2%と、生活困難層の方が自己肯定感が低いという結果が出ています。

また2024年度の文部科学省・国立教育政策研究所の「全国学力・学習状況調査」(p30)によると、自己肯定感と学習意欲に相関があることがわかっており、自己肯定感の低さが学習意欲に負の影響を及ぼす可能性が考えられます。
自己肯定感が下がり、自分を価値のない人間だと考えるようになると「努力が報われる」という発想が持ちにくくなります。自ら学ぼうという気持ち、更には将来の夢や希望を子どもたちから奪ってしまうのです。これは子ども個人の問題ではなく、社会環境に起因するもので、構造的な問題です。

欠食が学ぶ意欲の低下を招く

経済的に厳しい家庭では、三食きちんと食事をとれないこともあります。特に朝食を取らない割合が一般世帯に比べ高いという調査結果(※)もあり、このような欠食による栄養不足は、学習意欲や学力低下につながると言われています。食生活の偏りにより、疲労が抜けず集中力が低下して、これらが積み重なることで結果的に学力の低下を招いてしまうのです。

令和元年 大分県子どもの生活実態調査(子ども・保護者)結果の概要(p3)

2023年度の農林水産省「食育白書」(p58)によると、毎日朝食を食べる子どもほど、学力調査の平均正答率が高い傾向があることがわかっています。

出典:令和5年度 食育白書(農林水産省)

以上のように、経済的に厳しい環境が、子どもたちに心理的な側面や食生活に影響を与え、更には経済的理由で塾や習い事に通えない、学費が払えないため進学できないといった事情も加わり、学力の格差が生じてしまうのです。その学力の格差が就学の格差につながり、就学の格差は所得の格差につながってしまいます。こういった背景が世代間で貧困の連鎖が生まれる原因であると言えます。

家庭の経済状況が原因で、子どもたちの将来の可能性が狭まってしまう今の状況は、改善しなければなりません。
未来を担う子どもたちが健康でいきいきとした日々を送ることができるよう、今できることは何か、私たちと一緒に考えてみませんか。

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