こども宅食の利用者さんに「おさがりの絵本」を届けた小さな絵本店の話

Gaku Yamazaki
山崎 岳
NPO Florence

1992年生まれ。NPO法人フローレンスでこども宅食の企画推進とWEB回りを担当(Twitter:gakkun87

お子さんと一緒に絵本を読みながら眠りにつく時間は、いつまでも記憶に残る大切なひとときですよね。

そんな親子の時間を紡ぐ絵本を、文京区で古本事業を営む株式会社ブギさん(ネット古本店「本棚お助け隊」と中古絵本店「OSAGARI絵本」を運営)から「こども宅食」の利用者さんへ、クリスマスプレゼントとしてご寄付いただきました。

ブギさんが運営する小さな中古絵本店「OSAGARI絵本」事業とのはじめてのコラボレーション、みなさんにとっても喜んでいただけました。

「素敵にラッピングをしていただき、カードも付けていただいたので、子供はそこでも大喜びでした。いただいた絵本も、月齢的にぴったりで、大興奮で何度も自分でページをめくったり、読んで!ととても大喜びでした。本当に素敵なクリスマスプレゼントをありがとうござます! 」

「子供達みんなでお手紙を音読し、いただいた絵本と一緒に眠りにつきました。とても嬉しいプレゼントをありがとうございました😊」

プレゼントを受け取ったご家庭からも、うれしいメッセージが届いています。

ということで、今回はブギさんが絵本といっしょに贈ったあたたかい想いについて、伺ってきました。

OSAGARI絵本とは?

―まず、今回の企画は、どのようにしてうまれたのですか?

菅原:もともとは、弊社が運営する「本棚お助け隊 古本チャリティ募金」で何かお手伝いできることはないかと、こども宅食さんにお声がけさせていただきました。でも、担当の方からご利用家庭をとりまく環境を伺うなかで、「クリスマスも近いことだし、弊社商品の絵本をプレゼントしたら喜んでいただけるんじゃないか」ということになりまして。

伊藤:こども宅食のご担当さんがいらした日、たまたまオフィスにいた私も同席させていただいたのですが、「これはOSAGARI絵本の得意分野です!」と。

弊社のメイン事業である「本棚お助け隊」では、全国から古本の買取を行い大手通販サイトを中心に再流通していますが、私が担当する「OSAGARI絵本」チームでは、実店舗で中古絵本を販売してるんです。お店といっても、オフィスの片隅にある小さなスペースですが。

でも、当店には保育士でもある絵本育児アドバイザーが在席しているので、ただ絵本をプレゼントするだけでなくて、事前に好きな遊びなどを伺ったうえで、「その子が好きそうな絵本をセレクトする」という。これはきっと、子どもたちをわくわくさせられる何かが、できるのではないかと思って。

―絵本店に保育士さん? OSAGARI絵本について、もう少し教えてください。

伊藤:もともとOSAGARI絵本は、私が息子を妊娠した時に、本棚お助け隊のスピンアウトプロジェクトとして始めました。生まれてくる子どものためにネットでいくつか中古絵本を買ってみたのですが、絵本はできれば、自分で手に取って中身を見ながら選びたいなと思って。スピード感などの利便性がネットの良さではありますが、子どもと一緒に繰り返し読むであろう絵本は、自分の目で確認したくて。

そんな個人的な思いがきっかけでしたが、あれから4年。現在は、絵本を買取・販売するだけではなく、親子向けのお話会や絵本を使った地域活動を通して、”だれかが読み終わった絵本を、次の持ち主に思いごと伝えるお手伝い”をしています。

与えることは、与えられること

伊藤:弊社の社名である「ブギ」は、「ギブ(与える)」をさかさまにした言葉です。「与える」ことは、実は自分たちが「与えられている」んだという思いをいつも忘れないようにという、企業精神からきているんです。

誰かから(有形無形の)贈りものを受け取って幸せになった気持ちがどんどん循環していけば、よりよい社会につながる。今回の絵本のお届けも、受け取ったお子さんはそのお友達に、親御さんは、誰か近くの人に、というふうに、「誰かを思う気持ち」が伝わっていったらすてきだなと。

― 「こども宅食」のコンセプトにとても近くて共感しました。利用者さんに「将来子どもが大人になったときには、社会に恩返しできるようになってほしい」と感想をいただいたことがあります。

「こども宅食」でお届けする食品は、ほとんどが企業さんからの寄付ですが、私たちも贈りたいという気持ちと利用者さんをつないでそんな循環をつくるお手伝いをしているのかもしれません。

伊藤:そんな循環のなかに入れていただいてうれしいです。ありがとうございます。

絵本を選んだのは「絵本アドバイザー」のあきちゃん先生

伊藤:今回絵本を選んでくれたのは、OSAGARI絵本の絵本育児アドバイザーで「あきちゃん先生」こと岩田です。こども宅食さんからいただいた絵本希望者リストをもとに、ものすごい集中力で絵本を選びきってくれました。選書が終わると、満面の笑みで「なんというか・・・ありがとうございます! 私、こういうことにかかわれて、本当に幸せだなあって」と。

―「あきちゃん先生」は、もともと文京区で保育士をしていたと伺いました。

岩田:そうなんです。独身時代、幼稚園教諭の勉強をしていたこともあり、娘が小学校を卒業するタイミングで保育園で働き始めました。非常勤職員として日々保育にかかわりながら、プライベートでは、娘が小さいころから大切にしていた絵本の読み聞かせを、ボランティアなどで続けていました。私自身、子どものころから絵本が大好きだったこともあります。

― どうして今の仕事に飛び込もうと?

岩田:娘が大学を卒業して子育てがひと段落した、というのが大きなきっかけでした。それで、これからは大好きな絵本にもっと深くかかわることで、新しいチャレンジをしてみようと思って。一方で、保育園時代、仕事に子育てにと毎日忙しく頑張るお母さんたちの姿も目の当たりにしていたので、保育士としての経験も活かしながら、なにかお役に立てたらいいなと思っていました。そんなときにOSAGARI絵本を見つけて、そのコンセプトに惹かれ、ドアをたたいたんです。

今回、「こども宅食」さんの絵本を選ぶというお仕事をいただいたんですが、本当に幸せな時間でした。絵本の希望を募る時に親御さんからたくさんメッセージをいただいたので、ひとつずつ読ませていただき、お子さんへの想いを感じながら選ばせていたきました。メッセージがない方も、お忙しいなか「我が子に絵本を届けたい」ということで申し込んでくださったのですから、そういった思いもしっかり感じながら。

伊藤:弊社としても、思いはたくさんあっても会社として出来ることと出来ないことがあります。予算を考えつつも、プレゼントですからできるだけ状態のよいものをお届けしたいですし。そんな中、岩田がとても丁寧に選書してくれました。「お子様の年齢と性別」「兄弟の有無」そして「興味のある遊びや好きな絵本」などのメッセージを考慮しながら、「この絵本なら、お兄ちゃんが読み終わったあと妹ちゃんも読めるかな」なんてつぶやきつつ。

手にとってもらって「わあっ!」と喜んでくださる、その光景を思い浮かべながら、メッセージカードやラッピングにもOSAGARI絵本が大切にしている思いを込めました。

小さなことでも、続けることで一歩ずつ近づけるような

菅原:我々も、もちろん会社を運営している以上、日々お客様に良いサービスをご提供し売上につなげる、というのはとても大切なことです。弊社の場合は、本を買い取り、再販する、ということですね。でもそれだけでなく、そのスキームを使った地域課題の解決など、ちょっと踏み込んだところでお役に立てることがあるんじゃないか、と思っているんです。

去年文京区でこども宅食が始まると知ったときは、同じ文京区というご縁なのだから、私達もお手伝いできることはないかと考えていたんです。我々のような小さな会社でも、何かできることがあるんじゃないか、と。

時代が違うと言えばそれまでですが、うちは実家が肉屋だったんですよ。商店街にあって、隣は八百屋さんとか豆腐屋さんで。昔はよその家でご飯を食べたりお風呂に入ったりっていうのが普通で、みんな店の片隅とかあっちこっちで遊んでいました。そういうご近所や地域での助け合いのなかで自分も育ててもらった、という思いもあります。

伊藤:去年、文京区本郷で、悲しい事件がありましたよね。こんな身近で、もしかしたらすれ違っていたかもしれない人って考えると、私も色々消化しきれなくて。こども宅食のご担当者とはじめてお会いしたのが、まさにそのタイミングでした。

でも今は、こういう小さなアクションでも、続けることで何かそこに一歩近づけるかもしれない、と感じています。絵本が1冊届くことで、誰かが自分たちのことを思っていてくれてるんだ、一人じゃないんだって。絵本1冊に、もしかしたらその日が救われるかもしれないって。

自分の子どもにも、ほこらしい仕事ができました

伊藤:今回の絵本を届ける過程が、とても幸せでした。岩田やラッピング作業にかかわってくれたスタッフと、そんな思いを共有できたことも。また、自分たちが取り組んでいる事業の意義についても、再確認できました。1年の最後に私達がいただいた、大きなプレゼントです。

そのあと家に帰って、4歳の息子にこの話をしたんです。クリスマスはプレゼントをもらう日じゃなくて、みんなが幸せになりたい日、なれる日なんだよねっていう話を。そして、「かあさんは今日、たくさんの子どもの絵本を包んで、サンタさんにお渡ししてきたんだよ」と。

このプロジェクトにかかわらせていただいて、本当にありがとうございました。

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