こども宅食対象世帯の生活実態と支援ニーズに関するアンケート分析結果報告

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2019.10.04

こども宅食事務局

こども宅食事務局が、こども宅食の歩みや、子どもの貧困についてのニュースをお届けします!

「こども宅食」は、文京区で始まった経済的に厳しい子育て世帯に寄付等で集めた食品等を届ける事業です。「こども宅食」では、食費の負担を軽減するだけでなく、対象世帯とコミュニケーションがとれる関係性を築くことで、世帯の困りごとやニーズを見つけ、必要な支援に繋ぐことを目指しています。

(こども宅食の配送の様子)

これまで文京区では、子育て世帯に対する「文京区子育て支援に関するニーズ調査」を実施してきましたが、こども宅食の対象となる経済的に厳しい子育て世帯に対する調査は実施していませんでした。

今回、「こども宅食」の申込世帯(児童扶養手当または就学援助世帯)に対して、利用開始前にアンケート調査を実施しました。その結果、これまで見えてこなかった対象世帯の状況やニーズを知ることができました。生活状況に応じた必要な支援を検討するために、生活状況が厳しくなるリスクが高い世帯の特徴の分析も併せて行いました。

こども宅食で実施した調査の目的と実施概要

本調査は以下の3点を目的として実施しました。実施概要は以下の図の通りです。

今回の調査で明らかになったこと(結果概要)

今回の調査で明らかになったことは以下のとおりです。それぞれの項目に関するデータの詳細は、次の段落以降に記載しています。

こども宅食対象世帯の生活実態

こども宅食対象世帯には、借金しながら家計をやりくりしている、公共料金各種の支払いができないことがあるなど、経済的にかなり苦しい状況で暮らしている世帯が含まれていることがわかりました。また、文京区全体の子育て世帯と比べると、対象家庭は経済的な理由で「家族旅行」や「習い事」など子どもに対する体験機会を提供できていない割合が高く、子育て環境に大きな差があることがわかりました。

支援サービスの認知/利用状況とニーズ

行政や民間団体等がすでに提供している「修学資金の貸付」、「学習支援」、「住宅を探す援助」など一部の既存サービスについては利用している人が少なく認知度も低いことがわかりました。また、こども宅食が現在配送している食品や生活必需品に対するニーズは、就学費用の軽減や手当などの経済的支援に次ぐ高さとなっており、個別相談や専門的な支援よりもニーズが高いことがわかりました。

「生活状況が厳しくなるリスクが高い世帯」の定義設定

生活状況に応じて必要な支援の方法・内容について検討するために、生活状況が厳しくなるリスクが高いと考えられる世帯の分析を進めました。「家計の状況」、「生活困難の状況」、「病気・病歴・障害・介護の有無」など独自に設定した6つの課題のうち、3つ以上重複している世帯を生活状況が厳しくなるリスクが高いと考えました。

 

調査結果の詳細

それでは、一つひとつの項目について、詳しく説明していきます。

約1割の世帯が借金をして家計をやりくりしている

約1割の世帯が借金をして家計をやりくりしていることがわかりました。また、過去1年間に公共料金(電話、電気、ガス、水道料金)の支払いができないことがあった世帯もそれぞれ1割程度存在していることがわかりました。

対象世帯に、現状の生活満足度について、点数をつけてもらいました。その結果、半数以上が100点満点中70点以上をつけている一方、30点以下という低い点数をつけている世帯が約1割存在しています。

文京区の平均的な子育て世帯との差が大きい。

家族旅行では、約6倍の差が。

 

子どもへの体験機会の提供を測定する「剥奪指標」の測定も行いました。「剥奪指標」とは、社会生活に必要とされる、衣食住やサービス、社会的活動などの項目を選定し、その充足度を指標化したものです。「経済的な理由でできない・やらない」を選択した世帯は、文京区の子育て世帯全体では数%であるのに対し、こども宅食の対象世帯では10%を超えるものが多く、その差は大きいことがわかりました。こども宅食の対象世帯のうち、「経済的な理由でできない、やらない」を選択した割合が最も高かった「1年に1回くらい家族旅行に行く」は約6倍以上の差がありました。

 

行政や民間が提供しているサービスの中には、

利用世帯数が少なく、認知度が低いものがある。

行政や民間ですでに提供されている「修学資金の貸付・奨学金」、「学習支援」、「生活資金の貸付」、「住宅を探す援助」については、利用している人が少なく、認知度も低いことがわかりました。

「住宅を探す補助」は約7割のご家庭が認知していませんでした。また、子どもの教育に直結する「修学資金の貸付・奨学金」や「無料または低料金で利用できる学習支援」については、3割以上のご家庭が認知していないことがわかりました。

回答した世帯の96%が食品や生活必需品の支援が

「非常に重要である」「重要である」と回答

食品や生活必需品の支援については、就学費用の軽減や手当などの現金の給付といった経済的支援に次いでニーズが高く、個別相談や専門的な支援よりも必要とされていることがわかりました。

生活状況が厳しくなるリスクが高い世帯の特徴

今回、生活状況に応じて必要な支援の方法を検討するために、生活状況が厳しくなるリスクが高い世帯の特徴をまとめました。

まず、アンケートの自由記述や専門機関との協議をもとに、以下の6つの課題に注目して分析を行いました(各課題の設定方法、考え方については、対象世帯への配慮として、詳細の公表を控えさせていただきます。)

これらの課題が3つ以上重複している世帯は、その他の世帯に比べて、より厳しい状況にあり、支援に対するニーズが高いことがわかりました。

また、重複する課題の数が多いほど、生活満足度が低い傾向が見られました。

こういった結果を踏まえて、こども宅食事業においては「課題が3つ以上ある世帯」を生活困難度が悪化するリスクが高い世帯として設定し、食品と一緒に届ける情報の最適化、紹介する支援サービスの充実を進めていくことにしました。

 

課題が重複する世帯の特徴

 

課題が重複する世帯に注目して支援ニーズの分析をすると、「周囲からわからないような方法で支援を受けること」に対するニーズが最も高いことがわかりました。

また、「精神的なケア」および個別相談に関わる項目のスコアも、課題が0個世帯より20ポイント程度高く、支援に対するニーズが異なる傾向が見られました。

今回の調査結果を受けて

今回の調査結果を受けての気づきは、以下のとおりです。

  • こども宅食の対象世帯の置かれた状況や既存の支援サービスの利用実態や支援ニーズを知ることができた
  • 対象世帯のうち、生活状況が厳しくなるリスクが高い世帯を設定し、その世帯は課題が少ない世帯とは異なるニーズであることが明らかになった
  • こども宅食が提供している「食品や生活用品」や「見えない支援」については、対象家庭にとってニーズが高いことがわかった

こども宅食プロジェクトでは、今回の調査結果を活用して、対象家庭の方々への情報や機会提供などの内容、方法を見直すなど、対象家庭の立場に立って支援を届けるための活動を進めていきたいと考えています。

こども宅食の対象世帯の生活実態と支援ニーズに関するアンケートはこちらから

こども宅食は、ふるさと納税を活用して、事業を運営しています。クラウドファンディングに挑戦しているのですが、現在達成率が約30%となかなか厳しい状況です。ぜひ応援をお願いします。

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