「助けてと言えない人に、手を差し伸べられる。そのことに価値を感じたんです」石井食品がこども宅食に寄付をした理由

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2020.10.16

こども宅食事務局

こども宅食事務局が、こども宅食の歩みや、子どもの貧困についてのニュースをお届けします!

「イシイのミートボール」で有名な「石井食品」さん。素材にこだわり、食品添加物を使わない無添加調理を徹底し、安全とおいしさにこだわっています。

同社は千葉県船橋市にある本社オフィス1階に「食と人をつなぐ」をコンセプトとした、地域の人向けのコミュニティースペース「コミュニティハウスヴィリジアン」を設置。親子や高齢者が集まる憩いの場やイベントスペースとして交流を生む場となっています。

また子育て支援にも熱心で、東京都文京区で行われているこども宅食に2020年から食品の寄付をしてくださっています。同社が地域との繋がりを大切にする理由やこども宅食に寄付をしようと思ったきっかけについて伺いました。

石井食品ご担当者様ご紹介
染谷芳子(マーケティング部総括マネージャー)
山寺康之(ロジスティクス部 京丹波工場マネージャー)
松井真実子(マーケティング部広報担当)

 

食を通じた地域住民との交流を大切にする

ーー本社の1階に地域の人向けのコミュニティスペースを併設するのは、なかなか見られない取り組みだと思います。本社に地域と繋がる場を設けた理由を教えてください。

(オンラインにて取材を受ける染谷さん)

染谷さん:もともと弊社会長が生産者や地域の方々との交流を大切にする考えの持ち主であることもありますが、大きなきっかけは2011年に発生した東日本大震災です。本社の耐震工事を検討する中で、せっかく行うなら近隣住民の方が気軽に来られて、食の魅力も知っていただける場所を作るのはどうか、という話になりました。その考えのもと、2014年から運営しています。

平日の昼間にはベビーカーを押した女性をはじめ、高齢者の方も来館されます。みなさんが楽しんで帰られている様子を見て「作ってよかった」と感じますね。ヴィリジアンは飲食スペースやキッチンスペースなど複数のエリアに分けられています。飲食スペースでは当社のミートボールやハンバーグといったなじみのある商品を食べていただくことができます。単に食品をご提供するのではなく、食材の旬や栄養面のお話もすることで、食をきっかけにして地域の方とのコミュニケーションが生まれています。

(親子向けのオンラインの料理教室の様子)

松井さん:ヴィリジアンにはキッチンスペースが備わっているので、料理教室をはじめ様々なイベントを行えます。コロナ禍で大人数が集まりにくいことから、親子向けのオンラインの料理教室を企画しました。場所の制約がないので全国から参加でき、沢山のお子さんの笑顔が見られました。今後もこのような試みを続けていく予定です。

 

ーーとても素敵ですね!食をきっかけにして人との繋がりを作る点はこども宅食の考えに通じるものがあります。

松井さん:私たちには「日本一、生産者と地域に貢献する食品会社になる」という目標があります。お客様と生産者をつなげる活動をしていますので、社員ひとりひとりが人とのつながりや絆の大切さを日々感じて働いています。これは地域の皆さんとのふれあいを大切にするヴィリジアンの運営にも活かされていますし、こういった意味で、こども宅食さんの活動にとても共感しています。

 

「助けが必要な人に、自分は何ができるか」から始まった

ーーこども宅食への寄付を始められた背景には、「地域社会に貢献する」との社風が影響しているように感じます。

染谷さん:それは大いにあります。会社が意思決定をする前に営業担当者が自発的に支援物資の運搬といった行動を起こす者もいるんです。「困っている人に対して、自分には何ができるか」を当たり前のように考える社員が多いんですよね。

こども宅食への寄付については、京丹波工場の山寺さんが本社に呼びかけてくれたことがきっかけでしたね。

(京丹波工場の山寺さん)

山寺さん:私は以前からひとり親や経済的に苦しいご家庭のお子さんに「自分は何ができるか」を考えてきました。でも京丹波工場があるエリアにはこども食堂のような施設はなく、支援をしたいけど支援先が見つからない状態でした。

そんな時に知ったのが、お寺の「おそなえ」を「おさがり」として経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそわけ」をし、貧困問題解決を目指す「おてらおやつクラブ」という活動です。
「おてらおやつクラブ」との取り組みを始める際、奈良県のお寺で、弊社の社員数名とおすそわけの発送ボランティアに参加しました。
ボランティアをする中で「同様の活動をしているところが他にもあるのではないか」と思い、おてらおやつクラブさんからご紹介いただいたのがこども宅食でした。その後、こども宅食のご担当者から支援内容のご説明を受け、「社としてぜひ寄付をしたいと」と思うようになりました。

 

ーー社をあげて「こども宅食を応援しよう」という意見は社内ですんなりと受け入れられるものなのでしょうか?

山寺さん:先ほど染谷が話したように、個人として、困っている人のために何ができるかを考える社員が多いので、会長と社長から承諾をいただくのに、大きな苦労はありませんでした。

染谷さん:社員が使う社内チャット上では、普段から情報共有が盛んです。山寺の関心や活動も多くの社員が知っていたことから賛同を集め、こども宅食への寄付に繋がったのだと思います。

 

困っていても、助けを求められないことに驚いた。

ーーこども宅食への寄付を実際にされてみて、どんなことを感じられましたか?

山寺さん:こども宅食では食品を届けるだけでなく、継続的にご家庭を見守られているところが良いですね。

たった一度品物を渡して終わりではなく、困りごとを抱える親御さんやお子さんが社会から孤立しないよう、いつでもサポートできる体制を整えている。支援側とご家庭がLINEで繋がっていれば、親御さんは気軽に相談ができます。必要に応じて専門機関へつなぐ。こうした姿勢に深く共感しました。

寄付をするようになって驚いたのが、行政の窓口に支援の相談に行きづらいと感じている人の多さです。実際には困っているのに誰にも言えずに我慢をしてしまい、既存の支援の対象にならない。こうした現実を初めて知りました。

 

ーー文京区こども宅食が今年5月に公開した調査結果でも、「行政の相談窓口を過去に利用したことがある」「現在利用している」と答えた世帯は、約3割に止まっています。そもそも支援制度を知らないのもありますし、窓口に行くことに心理的なハードルを感じていることが影響しています。

(オンライン取材を受ける松井さん)

松井さん:「ここに来れば、食料や生活必需品をお配りしますよ」と呼びかけたとしても、出向くことをためらう方がいらっしゃると、必要な人に必要な物が届かないことになります。

そう考えると、困っている人が行政の窓口に出向くのではなく、助けを必要とする人のところに直接自分たちで支援をお届けするこども宅食さんの活動は素晴らしいと思います。

それに新型コロナウイルスによって大人数が集まりにくい状況ですから、支援を家庭にお届けする方法は、時代に求められているとも感じています。

 

一人で抱えこまず、みんなで支えあうのが理想ですよね

ーーこども宅食の活動をそのように評価してくださって、とても嬉しいです。

山寺さん:食べ物を届けるだけでなく、こども宅食スタッフとの交流を通じて「自分は一人じゃないんだ」と思えるきっかけになるところが素晴らしいなと思います。

今困っている人が「苦しいし、困っているけど、自分は助けを求めていいんだ」と堂々と思えるって、気持ちの面で大きな支えになるのではないでしょうか。

生きていれば仕事や家庭のことなど、何かしらの困難を経験すると思うんです。そんな時に「自分は一人じゃない。助けてくれる人がいる」と心から感じられたら、どうにもならないくらいまで追い詰められにくくなりますよね。苦しいときに一人で抱え込むのではなく、みんなで支え合っていきましょうね、という社会になったら、みんなもっと生きやすくなると思います。

 

食材の旬や栄養について伝え、教育の機会に繋げたい

ーー最後に、石井食品様がこれからこども宅食と一緒に取り組みたいと思うことがあれば、お教えください。

松井さん:食品のご提供を通じてお子さんに食材の旬や栄養のほか様々な食べ方があることを知ってもらう食育の取り組みをご一緒したいです。例えばですが、食品をお届けしたご家庭からの「こんな食べ方をしたよ」とのご連絡に対して、当社が「素敵なアイデアですね!」とお返事をする。食を通じてそういう交流もできたら嬉しいですね。

染谷さん:あと、私たち食品メーカーが絶対に忘れてはいけないのが、食材を作ってくださる生産者の方がいるということです。当社では「地域と旬」と銘打ち、全国の生産者とともに、商品を作ったり地域をさらに盛り上げるという取り組みを行なっています。こども宅食を利用しているお子さんたちに対して、農家や生産者の仕事についてもお伝えしたいです。    

お子さんたちの中には将来生産者になったり、食を支える仕事に就いたりする人がいるかもしれません。日本の農業や畜産業の課題や将来についてをお話しする教育の機会になったらいいなと思います。

 

writing:薗部雄一

 

引き続きのご支援をお願い致します!

withコロナ時代の新しい生活様式では、ひとつの場所に集まることが難しくなり、人との接点が以前より持ちにくくなっています。子ども食堂などの運営も難しい状況の中、こども宅食のように配送を通じて見守り、つながるという支援のニーズが更に高まっています。少しでも多くの方のお力になれるよう、文京区こども宅食は今後も活動を進めてまいります。

引き続き、皆様からの温かい応援をお願いいたします。

 

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