「ひとり親家庭で、お米に困った妻の体験が寄付の原動力」文京区こども宅食に100世帯分のお米の提供を続ける夫婦

こども宅食事務局

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「もし、お米だけでもあったら、どんなに良かったか」
「ひとり親家庭で育った妻は、食べ物がないことのつらさを理解しています。寄付は妻からの提案でした」

そう話すのは、文京区で会社経営をする速水清さんと、妻の教子さん。2021年12月に、チョコレート682個をクリスマスのお菓子としてプレゼントし、その後2022年からは2ヶ月に1回の定期配送の度に約100世帯分、重さにして約200kgのお米をこども宅食に寄付してくださっています。速水ご夫妻へ寄付のきっかけのほか、こども宅食に寄付をしてよかったと感じていることなどについて伺いました。

母の給料日前にはお米がなく、翌日のお弁当に困った

――お二人がこども宅食に寄付をしようと思ったきっかけを教えてください。

教子さん:テレビで地域のひとり親家庭にお米を無料で提供している方のニュースを見たことがきっかけです。「ひとり親家庭に食品を提供する活動があるんだ。私もやりたいな」と思ったものの、何をしていいかわからず行動には移しませんでした。その後、文京区の成澤区長が「こども宅食でご家庭に配送するためのお米が足りていない」と現状を訴えている場面に出くわし、「それならばお米を送ろう」と決めました。

清さん:お肉は食べ応えがありますが、日持ちしません。お米であれば保存できて、しかも満足感も得られます。妻がお米の寄付に強い反応を示したのには、彼女の家庭環境があります。

教子さん:私はひとり親家庭で育ったのですが、高校生のころ、母の給料日前になるとお米がなくなってしまい、翌日のお弁当がないときがありました。おかずがなくても、お米さえあればおにぎりにして学校に持っていけるじゃないですか。その体験から、お米のありがたさを痛感しています。

まさかお米が足りていないとは思わなかった

――コロナ禍によるこども宅食利用者の増加に伴って、文京区ではお米の確保が課題です。成澤区長の発言を聞き、お米をご提供いただけていることに感謝しています。

教子さん:お米が足りないことを知ったときには驚きました。むしろ、お米は確保しやすい食材だと思っていました。区長が現状をお話くださらなかったら、気づくことすらなかったはずです。

清さん:寄付では何を送るかが重要ですが、その際には受け取る側の気持ちを考えることが大切です。ただ寄付をすればいいわけではありませんからね。妻は自分の体験からお米のありがたさをよく知っていたため、私たちはお米を提供することにしました。

――2022年秋の配送では、新米をお送りくださいましたよね!

教子さん:送る時期によっては新米ではないこともありますが、やはり新米は美味しいですよね!お世話になっているお米屋さんが新米をご提供くださったので、ぜひ召し上がっていただきたいと思いました。

もし夫が「寄付はダメ」と言ったら、自分の見る目がなかったと思ったかも

――教子さんがニュースを見て寄付を思い立ったと伺いました。「こども宅食にお米を寄付したい」と打ち明けた際の清さんの反応はどうでしたか?

教子さん:夫は「いいよ」と言ってくれました。念のために確認したのですが、賛同してもらえてよかったです。もし「だめ」と言われたら、私の見る目がなかったと思うしかなかったでしょうね。

清さん:そうきたか(笑)

教子さん:夫の会社も新型コロナウイルスの影響を受けて、一時期は大変でした。業績が少しずつ改善しているとはいえ、そんな状況でも寄付活動に前向きになってくれたことに感謝しています。

清さん:実はタイミングも良かったんですよ。コロナ禍で旅行客が減り困っているローカル企業のために「サポートハワイ」の事業を立ち上げたハワイ在住の知人に寄付をしたことがあり、「人の役に立てるのはいいな」と思い、自分にできることをしたい気持ちが高まっていた時期でした。だからこそ、妻の気持ちを理解できました。

お米を継続して提供できるのは、協力してくれる人たちのおかげ

――お二人は約1年にわたり、隔月で約100世帯分のお米の寄付を続けてくださっています。費用やお米屋さんとのご調整など大きなご負担がある中で、なぜ継続的なご提供をいただけるのでしょうか?

教子さん:身近に協力してくれる方がいるおかげです。私たちが普段お世話になっているお米屋さんは、「こども食堂」を運営されていました。そのため、私たちの「こども宅食にお米を寄付したい」との気持ちに深い理解を示してくれたのです。さらに「こども宅食に送るのであれば」と言って、お米を通常価格の半額近い値段で譲ってくれました。しかしそれでは利益が出ませんから、「ちゃんと利益は取ってくださいね」と伝えても、「大丈夫ですよ」の一点張りで。

清さん:協力してくれる方がいなかったら、とても続けられなかったよね。

教子さん:残念ながらそのお米屋さんのご主人は亡くなってしまいましたが、産地のお米屋さんがお米のご提供を引き継いでくださいました。お米の価格は安いままで、送料も負担いただいています。私たちの寄付活動は、こういった方々の力で成り立っています。

清さん:寄付は一度だけより、継続が大切だというのが私の考えです。勉強でも、仕事でも、結局のところは何事も続けることで成果が出るものではないでしょうか。

寄付を通じて「ひとりではない」ことを伝えたい

――こども宅食に寄付をして良かったと感じることはありますか?

清さん:先ほどお話した「何を送るか」にも繋がるのですが、受け取る側のことを考えて寄付をすると、喜びや幸せとして自分に返ってくることですね。私はそのことが一番嬉しい。もしただ「寄付してあげている」のような感覚では、そうした喜びはとても得られません。

教子さん:お米を必要とするご家庭の助けになれることが嬉しいです。お子さんの年齢によっては進学を控え、お金がかかります。ひとり親でお子さんを育てているお父さん、お母さんは本当に大変な境遇にいると思います。私の母も、きっと同じことを感じていたはずです。

でも、こども宅食をはじめ、支えてくれる人やサービスはたくさんあります。決して、ひとりではない。いろいろな人たちに助けてもらいながら、乗り切ってほしい。それが私の願いです。

なので、こども宅食への寄付は今後も続けていきたいです。状況によっては、どう頑張ってもできないときがあるかもしれません。そのときはしょうがないですけどね。できるときにできることを続けていきたいです。

ほんの少しのことでも、一人ひとりができることをする

――本当にありがとうございます!今後「こうした食品や品物を寄付したい」といったお考えはありますか?

清さん:お米以外にも「こういうのを提供してもらえれば」というご希望を教えていただければ、できればやりたいと思っています。

教子さん:そうですね!2022年のクリスマスではチョコレートを寄付したように、何かできたら良いですね。

清さん:あと、個人的にはこども宅食をさらに知ってもらう行動をしたいです。私は文京区内に住んでいますが、こども宅食も、行政の支援が行き届かずに苦しんでいるご家庭が区内にあることも知りませんでした。

教子さん:人の役に立ちたいと思っている人は、きっとたくさんいるよね。

清さん:そう思うよ。ただ、きっかけがないだけ。寄付を気軽に始められるといいですね。一人が何か大きなことをするよりも、少しずつであっても100人で行ったほうが、支援の輪がより広がっていくのではないでしょうか。

writing:薗部雄一


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