海苔弁で全員元気に!1230個の海苔弁を無償でプレゼントした「海苔弁いちのや」が広めたいこと

こども宅食事務局

こども宅食事務局が、こども宅食の歩みや、子どもの貧困についてのニュースをお届けします!

文京区「こども宅食」は、文京区にお住まいの経済的に厳しいご家庭に食品や日用品を定期的に届け、それをきっかけに必要な支援につないでいく取り組みです。配送時の見守りやLINEでの情報配信・相談対応などのコミュニケーションを通じて、ご家庭が相談しやすいつながりづくりを心がけています。

2023年7月、海苔弁専門店として東京都内を中心に19店舗を展開する「海苔弁 いちのや」さんより、文京区こども宅食のご利用家庭に海苔弁をプレゼントしたいというお申し出をいただきました。お話はあっという間に実現し、9月にはご希望のあった271世帯に1230個分のお弁当無料交換チケットをお届けすることができました。

ご希望個数をすべて無償でご提供という太っ腹な決断をしてくださったのは、「海苔弁 いちのや」をプロデュースする、店舗ナンバーワンホールディングス株式会社の代表取締役、三浦正臣社長です。

利益を追求する営利企業でありながら、なぜそんな決定ができたのか。ご自身の過去のご経験と社会課題に向き合う熱いスタンスを、三浦社長に伺いました。

一人でも親がいるのが羨ましかった子ども時代。「海苔弁 いちのや」の誕生秘話

―まずは、店舗ナンバーワンホールディングスの事業内容と「海苔弁いちのや」について教えてください。

主には飲食店のプロデュースをやっています。コロナ禍に入ったこともあって2020年の7月に海苔弁いちのやをつくったんですね。全国各地に仕事で出かけることが多いのでいろんな弁当を食べてきたのですが、おいしくないお弁当が多いんです。一番嫌だなと思ったのは、端っこに彩りの意味合いだけで入れられているおかずでした。おいしくないんですよ。僕がお弁当屋をやるんだったら、蓋を開けた瞬間全部ホームランバッターのお弁当にしたい、と思ったんです。

―実際、今回ご家庭からいただいた感想でも、「すべてのおかずがおいしかった」とか、「野沢菜がおいしかった」というご感想があって、ちょっと珍しいなと感じました。

そうなんです。おかずも全部おいしいものにしたいと思ったんです。漬物一個とっても、新潟駅まで行って「老舗の漬物屋さん教えてください」と教えてもらって。実際に見に行くとおじいちゃん4人でやっているような漬物屋さんだったんですが、そこでいただいた漬物がめちゃくちゃおいしかったんですよ。それで「これからお弁当屋さんやるんでこの漬物を卸してください!」ってお願いして仕入れさせてもらったんです。

―おいしいものにそこまでこだわりを持っていたのはなぜなのでしょうか。

実は僕、両親がいなくて。だから家でご飯を食べたこともないし、おいしいものも食べたことがなかったんです。おいしいものを食べるって幸せじゃないですか。だから、おいしいものを届けたいっていう想いで店をやってるんです。

―ご自身のご経験が、やはり今回海苔弁をプレゼントしようというきっかけとして大きかったのでしょうか。

少なからずありますよね。僕は小さい頃に他人の家によく預けられたりしてたんですが、人の家でご飯を食べてると、もっと食べたいのに「おかわり!」って言えないんですよ。僕からしたら、一人でも親がいるだけでうらやましかったです。

―気を遣わずにおなかいっぱい食べてほしいという気持ちや、ご家族みなさんで食べてほしいという想いがあったわけですね。

そうですね。「お子さんにお弁当配ろう」という話になったときに、親御さんとお子さんがきて、お子さんにだけお弁当を渡して、親御さんはもらえないというのは嫌だと思ったんです。だから「一人につき2枚渡してください」っていうのは僕からお願いしました。大変なのはどっちかっていうと親御さんの方だと思うので。

いろんな家庭のいろんな事情があるでしょうけど、ご家庭で子どもと一緒にお弁当を食べる機会になったらいいなと思ったんです。それを持ってお出かけするシーンができたりしたら嬉しいですよね。

海苔弁で全員元気に!「食べて幸せ」の感想に、「やってよかった」

―とはいえ、ご希望の家庭すべてにお弁当を無料プレゼントというのはかなり大きな決断だと思うのですが、ここまでされる背景にはどのような思いがあるのでしょうか。

ずっと昔からやりたいという思いはあったんですが、やるきっかけがなかったんですよ。僕たち飲食に精通している者の役割としては、現金で寄付するよりもおいしいものをお届けすることで貢献したいと思ったんです。今回、僕らにとっても普段届かないところに海苔弁が届くっていうのも大きかったですね。

それと、子ども食堂とか子どもレストランって言葉はよく聞くけど、一人親家庭といっても子どもが一人とは限らなくて、例えばお母さん1人に子ども3人いる状況で、なかなか外食なんてできないですよね。その中で僕らがやっているテイクアウトっていう事業は、すごいやりやすいなと思ったんですよ。

何かやりたいという気持ちがある人は山ほどいると思うんですが、やり方がわからなくて、なかなか実現には至らない人が多いと思うんです。だったら僕はもう第一線でやってやろう!と思ったんですね。

―店舗ナンバーワンホールディングスのお名前にも通じるものがありますね。

そう。僕らは第一弾が好きで、誰もやってないことをやってきたんです。世の中においしいものってたくさんあるし、おいしいものをお届けしたいっていう気持ちはみんな持ってるけど、それをお届けする方法がなかなか難しい中で、「どうやったらできるか」を考えて、やってやろうぜ!って動き出すのが僕らの精神なんです。

―社内で反対の声はあがらなかったのですか?

全くですね。海苔弁いちのやのテーマは「元気の源、食の欲」なんで。普段うまい飯を食べられない人もいるかもしれないし、仕事で疲れてる親御さんもいるかもしれないし、寂しく飯を食べてる子どももいるかもしれないから、海苔弁で全員元気にしてやろうぜ!って伝えました。それが元々のテーマなんですよ。そこに儲けも損もなんにもないんです。

―海苔弁を食べたご家庭の皆さんからは、たくさんの嬉しいご感想が寄せられています。ご覧になっていかがでしたか。

「普段食べられないものが食べられて幸せでした」っていう感想がいっぱいあったから、これは今回やってよかったなって思いました。僕には過去の体験があるから、皆さんの気持ちが多分誰よりもよくわかるというか。

あと、僕らはテイクアウトだから、こうやって生の感想を聞くことってあんまりないんです。レストランだと食べ終わったあとにお会計もあるし会話がしやすいですが、うちは海苔弁を渡して終わりだから、おいしいと思ってもらえたのかなっていうのがわからなくて。だから今回感想を聞かせてもらったのはすごく嬉しかったですよ。

こども宅食と一緒に取り組んだからできたこと。この取り組みがもっと広がれば

こども宅食との関わりを通じて、こども宅食の取り組みにどのような印象をお持ちになりましたか?

素晴らしいことだなと思いました。先程も言ったように、やろうと思う人はいるけど、本当にやる人って少ないと思うんです。文京区こども宅食は、企画がいいから僕らもスピード感をもっていの一番でやってやろうってなったんです。

実際やってみないと、何個くるかなんてわからないじゃないですか。でも僕らは「何個くるかわかんないけどやるぞ!」と。応募してくれた人みんなに元気を届けることができればと思っています。

―まずはやってみないと何も変わらないっていうのはすごく大事ですね。

そう、それを世に発信したいですよね。

飲み物を1杯だったり、料理を1皿ふるまって誰かを元気にできるなら、なんの損もないと思うんですよ。飲食店ができることっていうのは食を通じて人を元気づけることだと思います。

―お弁当を届けてくださっていますが、届けているのはお弁当だけじゃなくて、エネルギーや元気を届けてくださっているのですね。

そう。僕らはただの弁当屋じゃなくて、食を通じてみんなを元気にしたいっていうテーマをもってやってる弁当屋だから、それが広がればいいなって思ってます

―こども宅食と一緒に今後取り組んでみたいことなどあれば教えてください。

小さい頃、クリスマスにクリスマスチキンなんて食べたことがなかったんです。だから、クリスマスやお正月に各店でおいしいものを配ったりとか、親子がうちの店にきて楽しんでくれたらいいなあとかは考えますね。あとは、今回のことをきっかけに、例えばシングルマザーのお母さんが働く場所がないんだったらうちの店で働いてもいいんじゃないかっていう気持ちもあります。

やっぱり他の店がやらないことを僕らはやりたいっていうのがあるし、あとは一番手が届かないところをやりたいなっていうのもあるし。こども宅食は本当にいい企画だから、これがもっと広がればなあって本当に思ってて。やれることはいっぱいあるんだろうなと思うんですよ。

―こども宅食への関わりや社会課題への取り組みを考えておられる企業や団体の皆さんに、一歩踏み出すためのメッセージがあれば教えてください。

僕らが今回やってみたら、こんなにたくさん応募してくれる人が来たんだから、みんなもとにかくやってみてくださいって言いたいですね。例えば飲食店でお食事となると席が埋まってしまうという問題があるんだったら、お弁当にして渡すとか、大変だったら数量限定にするとか。もちろん多少のコストはかかりますが、できる方法でやってみたらいいと思うんです。これだけたくさんの親子がお腹いっぱいになって喜んでくれるんだから、それって人間社会としては悪くはないし、目指すべきところはたくさんの人が喜んでくれることかなと思ってます。

もちろんやり方がわかんないっていうのはあると思います。僕も今回お声掛けいただけなかったら自分たちだけではできなかったと思うんです。海苔弁屋さんがひとり親家庭に海苔弁配りますよって発信したって、なかなか繋がることはできないし。だから今回一緒に取り組ませてもらったっていうのはよかったって思います。

つくりたいのは、親子が楽しく過ごすシーン

―こうやってやればいいんだよ、という一つの形として発信できればいいのかもしれないですね。

そうですね。大事なのは、「おいしいものを食べてほしい」ってことじゃないですか。そこがすごい重要ですよね。今回のことを一つの事例として、もっと広がっていったり繋がっていったりするといいなと思います。僕らがやったことをきっかけに世の中のお弁当屋さんがみんな賛同してくれたらいいかもしれないとも思うんですよ。飲食店なんて何万軒とあるわけだし、弁当屋さんだっていっぱいあるじゃないですか。毎回海苔弁ばっかりだとつまんないと思うんで、いろんなところが賛同してくれたらいいですね。

―お話を伺っているといろんな方向に繋がっていきそうな気がしてきます。

いや、できますよ、やれば全然。僕らもやってみたら全然できましたしね。

たとえばスイーツとかあったら良いと思います。だって子どもこそおいしいスイーツ食べたいですよね。疲れてるお母さんお父さんもね。あと、花見弁当もやったら親子は喜ぶと思うなあ。スイーツでもお弁当でも、それを取りに行くのも楽しいし、それを持って楽しいところに親子でいくっていうのも楽しいし。そういうシーンですよ。つくりたいのは。

―お弁当と一緒に元気を届けている、とさっきお話ししましたが、さらに、そういう楽しい時間や場面もお届けしたいという想いがあるということですね。本当に熱い想いと温かいご支援、ありがとうございます!

こども宅食はふるさと納税による寄付を原資として活動しています!

こども宅食事業を運営するためには、配送費、広告宣伝費、人件費などの資金が必要です。また、配送する食品の多くは企業の寄付によりますが、お届けする食品が不足する場合は、活動資金をつかって事務局で食品を追加購入することがあります。

こうした活動資金にあてるため、毎年、全国からのふるさと納税で寄付を募集しています。

今年度は皆さんの温かいご支援により、無事目標金額を達成することができました。
応援してくださった皆さんに、心より感謝申し上げます。

今後も多くのご家庭にこども宅食をお届けするために、引き続きみなさんのご支援をよろしくお願いいたします。

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