寄付企業・団体向け2023年度「文京区こども宅食」事業報告会を実施しました<事業報告編>
文京区こども宅食は、文京区にお住まいの経済的に厳しいご家庭に食品や日用品を定期的に届け、それをきっかけに必要な支援につないでいく取り組みです。配送時の見守りやLINEでの情報配信・相談対応などのコミュニケーションを通じて、ご家庭が相談しやすいつながりづくりを心がけています。
約800世帯にお届けしている配送品や体験機会のほとんどは、事業に賛同してくださった企業や団体の皆さんからの寄付で成り立っています。
文京区こども宅食では、事業を支えてくださる寄付企業・団体の皆さんに向け、毎年年度末に事業報告会を開催しています。新型コロナウイルスの感染拡大によりオンラインでのご報告が続いていましたが、2023年度は、4年ぶりに対面での開催が実現しました。
報告会の前半は、直接感謝をお伝えできる喜びを噛み締めながら、文京区こども宅食の事業の意義や、2023年度の事業報告をお伝えしました。
この記事では、前半の様子をお伝えしていきます。
事業報告会について
文京区こども宅食は、官民7団体が対等な関係でパートナーシップを組み、コンソーシアムを形成して運営しています。
事業報告会では、コンソーシアムメンバーがそれぞれの役割にのっとり、文京区こども宅食やその成果、2023年度の取り組みについてご報告を行いました。
事業報告会の流れ
1.開会の挨拶(認定NPO法人キッズドア代表理事 渡辺 由美子) 2.「文京区こども宅食」事業紹介(認定NPO法人フローレンス会長 駒崎 弘樹) 3.文京区こども宅食プロジェクトにおける社会的インパクト・マネジメントの取り組み(認定NPO法人日本ファンドレイジング協会常務理事 鴨崎 貴泰) 4.2023年度「文京区こども宅食」事業報告 5.文京区長からの挨拶(文京区長 成澤 廣修) 6.感謝状贈呈(文京区長 成澤 廣修) 7.株式会社大和証券グループ本社 8.閉会のご挨拶(セイノーグループ ココネット株式会社代表取締役 河合 秀治) |
今回の記事では事業報告までをご紹介し、文京区長からの挨拶や感謝状の贈呈、寄付企業からのお話は、後半の記事<ご支援企業・団体編>でお伝えします。
1.開会の挨拶(認定NPO法人キッズドア代表理事 渡辺 由美子)
認定NPO法人キッズドア代表理事の渡辺由美子より、開会のご挨拶をさせていただきました。キッズドアは、文京区こども宅食事業において、主に物流や配送の管理、不足分の食品購入を担当しています。
私は2007年に任意団体を立ち上げ、足掛け17年に渡り、日本の子どもの貧困に取り組んできました。文京区こども宅食には、開始前から長く関わらせていただいていますが、その私から見ても、この文京区こども宅食はとても良い事業です。特にコロナ禍や物価高騰が続く中では特にこの事業があってよかったと思います。
そして、この事業ができるのは、今日お集まりいただいた皆さんが、食品や体験機会など、様々なご寄付をくださるからです。本当にありがたく、感謝申し上げます。今日は短い時間ですが、ぜひこの会をお楽しみいただければと思います。
2.「文京区こども宅食」事業紹介(認定NPO法人フローレンス会長 駒崎 弘樹)
最初に、認定NPO法人フローレンス会長駒崎弘樹より、子どもの貧困を巡る問題と文京区こども宅食事業のご紹介をいたしました。フローレンスは文京区こども宅食事業において、寄付品の調達や企業連携、利用者対応に加え、広報や事業推進を担っています。
まず、こども宅食の仕組みについて、改めてご説明します。
こども宅食は、食を通じて厳しい環境の子どもたちにリーチしていく福祉の仕組みです。単なる食支援にとどまらず、定期的な食支援をきっかけに、つながりをつくって、子育て家庭や子どもたちに伴走していく事業になっています。今は全国に広がっていますが、実は2017年にこの文京区から生まれた福祉事業です。
日本の子どもたちの9人に1人が、相対的貧困の生活をしています。小中学校が30人から40人学級だとすると、そのうち3人から4人は厳しい環境にいるということが言えます。さらにひとり親家庭の場合、なんと2人に1人が相対的貧困ということになっております。これは先進国のなかでも最悪レベルの事実です。
文京区こども宅食は、区内の子育て世帯のうち、就学援助や児童扶養手当の受給世帯の方々を対象としており、LINEを通じて簡単に申し込みができる工夫がなされています。
皆さんのご支援により、2017年当初は150世帯からスタートした文京区こども宅食ですが、2024年2月には800世帯へと広がっていきました。その内容も、食品の配送から、学用品や体験機会の提供へと広がり、質量ともにレベルアップしてきました。皆さんからのご支援あればこそでございます。
日本では、自責の念や周囲のまなざしなどを気にして、困っている方がSOSの声を上げづらく、見えない貧困となりがちです。そういったところに、こども宅食はむしろ出張っていくということが特色になっています。
また、文京区こども宅食コンソーシアムは日本でも珍しく、コレクティブインパクトという、行政、NPO、企業が手を取り合う仕組みで事業をおこなっているという特徴があります。
大変ありがたいことに、累計で8,000人以上の寄付者の皆さん、また140社以上の企業や団体の皆さんからご寄付をいただき、優しさに支えられています。
3.文京区こども宅食プロジェクトにおける社会的インパクト・マネジメントの取り組み(日本ファンドレイジング協会常務理事 鴨崎 貴泰)
続いて評価を担当している日本ファンドレイジング協会常務理事の鴨崎貴泰より、文京区こども宅食プロジェクトの成果について解説させていただきました。
毎年発表しているインパクトレポートの内容について解説をさせていただきます。
実施した事業がどのような成果をもたらしたのかということを社会的インパクトと呼びます。社会的インパクトを測定してそれをマネジメントに活かし、事業の中でPDCAサイクルを回しているのが、文京区こども宅食の最大の特徴の一つです。これには、皆さんからのご寄付に対する説明責任と事業改善という2つの目的があります。
事業の成果は、利用者の方へのアンケートやLINEでのやりとりを活用して評価をしています。
文京区こども宅食の対象者のうち80%の方が生活困難層にあたりますが、経年でみると最も困窮度が高い「困窮層」が今回初めて50%を超える結果になりました。コロナ禍を経て、非常に厳しい状況が顕在化している、ということが分かってきています。
物価高騰のあおりも受け、困難な状況にある利用者の方たちに、食品に加えて体験機会をお届けできるということは、ご家庭のニーズに非常に合った支援といえます。
また、利用者の傾向として、困難を抱えながらも一般的な支援につながれていない状況があります。アンケートの結果では、行政の相談窓口は知っているけれども利用できていないという回答が非常に多く、支援をうけるのをためらう心理的状況を持つ方もいらっしゃることがわかります。こども食堂やフードパントリーなどの支援を受けていないという方は4割いらっしゃいます。そういった意味で、文京区こども宅食が周囲に知られないようアウトリーチ型でご自宅に届けに行く支援はニーズに合致する部分が大きいと思います。
さらに定期的に見守りをしていくことによって、状況の変化やSOSがあればそれをキャッチすることができます。
こうした成果を可視化するため、ロジックモデルという設計図を作成し、仮説を立ててデータによる効果検証をしています。
ロジックモデルを活用して明らかになった昨年の具体的な変化について、何点かご紹介します。
まず、約7割の方が、食事内容に変化が生まれたと回答しています。さらに、約5割のご家庭で、お子さんの態度に前向きな変化があり、保護者の方も「安心して生活できている」や「社会とのつながりを感じる」という回答が事業の利用前後でそれぞれ約40%アップしています。
その他にも、自発的な相談が寄せられることも増えており、助けを求めることができる環境をある程度作ることができたのではないかと思います。ご利用者の方の相談内容に合わせて社会資源におつなぎするということも出てきております。
4.2023年度「文京区こども宅食」事業報告(認定NPO法人フローレンス会長 駒崎 弘樹)
2023年度における文京区こども宅食事業のご報告は、再びフローレンス会長駒崎より行いました。
ここからは、2023年度文京区こども宅食は具体的にどんなことができたのか、というお話をします。
皆さん2023年度といえば、物価高騰ですよね。給与が上がらず物価だけがあがって食卓を襲い、教育費は5.8%上がりました。厳しい環境の世帯をモロに直撃し、電気代やガス代が払えなくなってしまうご家庭も10%くらいでてきてしまったという状況です。
それに対して我々はまず、こども宅食をお届けするご家庭の数を増やしました。また、増量便ということで量を増やしたり、図書カードを配付したり、冷凍便を実施したりしました。
さらに、キャンペーンということで、プロ野球観戦チケットやコンサートチケットといった体験や、おいしい海苔弁をいただけるチケット、あるいはランドセルなど、食品以外の様々な支援も届けることができました。
ご家庭からはこんな声がありました。
厳しい環境にあったり一人親の方だったりすると、どうしても孤独や孤立感を持ってしまいます。様々な支援をすることで、一人じゃないと思うことができ、精神的なウェルビーングが向上しているということが伺えます。
また、2023年度に頑張ったことの一つが、LINEを活用した情報提供です。先ほどLINEで申し込みをするということを申し上げましたが、LINEのいいところは、つながり続けていろんな情報をお伝えすることができるところです。
就学援助や行政補助などの情報をわかりやすいデザインにしてLINEでお届けすると、非常にクリック率も高いのです。こうしたプッシュ型の情報提供によって支援にスムーズにつなげるということができるようになってきています。
また、ご利用者さんからチャットで相談が寄せられる仕組みも導入し、100件以上のご相談をキャッチしてソーシャルワーカーが対応するということができました。
宅食を通じて相談ができる関係を築き、いろんな支援につないでいくということができつつあります。
ご家庭からは胸が熱くなるメッセージをいただきましたが、こうした取り組みができたのも、皆さんからの支援、皆さんとともに歩むことができたからです。
これから更に良い形でやっていけるよう、コンソーシアムのメンバーで振り返りもおこなっております。利用世帯が抱える課題が重篤化する前に、予防的に支えられる仕組みを作っていきたいと思っています。
そのためには、皆さんの思いや支援を欠かすことができません。
ぜひこれからも食品や日用品、あるいは体験機会を支援いただけますと幸いです。また、ふるさと納税を通じて寄付金をくださっている方に対しても、本当に感謝の気持ちを申し上げたいと思います。
引き続き、このご家庭を支えていく仕組みの仲間として、ご協力いただけましたら幸いです。皆さんあっての文京区こども宅食でございます。
文京区長からのご挨拶と企業や団体の皆さんへの感謝状贈呈、およびご協力企業のお言葉は、後半の記事でご紹介します!
文京区こども宅食では、引き続き食品や日用品などの配送品や体験機会のご寄付や、ふるさと納税へのご協力など、様々な形でのご支援をお願いしております。
まずは、あなたの手の届く範囲で、子どもたちの幸せを一緒に考えてみませんか。