「心にとって必要なもの」を支援する
企業と家庭をつなぐ「WeSupport Family」とは
「WeSupport Family」は、民間企業2社と一般社団法人が提携して運営するフードバンク・プラットフォームです。2021年11月からひとり親家庭の食支援を行ってきました。
文京区こども宅食には、2024年の10月から継続してコーヒーやお菓子等、ご家庭に人気の食品をご提供いただいています。ご家庭が抱える経済的困難を、社会全体の課題と捉えて様々な角度から支援を行っている「WeSupport Family」。いったいどのような経緯で立ち上がり、どのような思いで運営されているのでしょうか。
WeSupport Family事務局でリーダーをつとめるオイシックス・ラ・大地株式会社、コーポレート・コミュニケーション部 部長 の大熊拓夢さんにお話を伺いました。
コロナ禍に迅速に立ち上がった「WeSupport Medical」
—「WeSupport Family」は、もともと新型コロナウイルスに対応する医療従事者向け食支援を目的に設立された「WeSupport Medical」が前身となっているそうですね。設立された経緯を教えて下さい。
大熊:新型コロナが流行りだした当時、医療従事者の方々が飲食店に行きづらいとか、お買い物するのも憚られるとか、病院の中の食堂も患者さん優先になっていてなかなか食べにくいとか、そういう時期がありましたよね。まさにそういうタイミングで、我々民間の企業が何かできることはないかということで、いろんな企業の方にご協力いただいて、寄付いただいた食品を医療従事者へお届けするプラットフォームを立ち上げました。
—立ち上げはスムーズにいったのでしょうか。
大熊:もともと企業の代表同士につながりがあったということもあり、社会事業をコーディネートする一般社団法人RCFと、物資の保管・管理を行うココネット、そしてオイシックス・ラ・大地が連携して2020年4月にスタートしました。
立ち上げてみると、医療従事者の窮状に対して「何かしたい」と思っていた企業さんから沢山の寄付が届きました。当時の感染状況もあって、寄付してくださる企業さんとは一回も対面でお会いしたことがなかったんですが、それでもとてもスピーディに進みました。
プラットフォームをひとり親家庭の支援に活かす
—WeSupport Medicalの活動から、WeSupport Familyへと移行された背景について教えてください。
大熊:コロナの感染状況も落ち着いてきて、我々としては一旦役割は果たしたということで2021年11月にWeSupport Medicalの活動を終了しました。
ただ、医療従事者への支援は一旦終えるとしても、せっかくできた食品寄付の民間プラットフォームをこのまま閉じるのはもったいないという声があがったんです。これを別の社会課題に活かせないかと議論した中で、「コロナ禍で経済的な状況が悪化する傾向にあったひとり親家庭に、食品をお配りすることはできないか」というアイディアが出たんです。
—様々ある社会課題の中で、ひとり親家庭への支援というところに着地するまでにはどういう経緯があったのでしょうか。
大熊:実際にフードパントリーなどの活動をしている現場に事務局メンバーで何度か足を運び、支援の様子を直接見学したり、関係者に話を聞いたりといったことを重ねました。
そこで、一見すると困っていることがわからないご家庭が、内情を伺ってみると、親御さんが子どものために自分の食事を抜いているというようなことを知りました。運営するボランティアさんや団体側も、食品を集めてくることや、それを保管して配布するということを手弁当でやっていらっしゃって、人手も物も足りていないことがわかったんです。
これは我々がお役に立てるんじゃないか、と思いました。
>>「フードパントリー」についてはこちらの記事で解説しています
—WeSupport Medicalの仕組みを引き継ぐ形でWeSupport Famlyがスタートしたとのことですが、具体的な活動内容や現在の活動状況について教えてください。
大熊:WeSupport Familyは、企業から寄付された食品を必要な家庭にとどける「フードパントリー」を行う団体を主に支援する形で、ひとり親世帯の食支援を始めました。
スタートからおよそ3年を経て、その規模は大きく拡大しています。食品を寄付する企業は開始時に18社でしたが、現在ではおよそ70の企業がさまざまな食品や物資を提供してくださっていて、寄付物資の累計金額相当は12億円にのぼります。
—支援活動をスタートしてからこれまでを振り返って、どのような変化を感じますか。
大熊:支援団体を通じて、毎月食品を届ける家庭数も、当初の約2,000世帯から約2万8,000世帯へと10倍以上に拡大しました。これは、ひとり親世帯に特化した食支援プラットフォームとしてはおそらく日本で最大級ではないかと思います。
コロナ禍で仕事がなくなったり減ったりという状況に加え、ここ数年は物価高が家庭を逼迫している状況です。生活に困っているという声は増えていると感じます。
「心にとって必要なもの」を支援する
—WeSupport Familyが支援をする団体は現在およそ50ほどとのことですが、文京区こども宅食へ支援を開始されたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
大熊:WeSuppport Familyの活動をオイシックス・ラ・大地と一緒に取り組んでいるRCFとココネットが文京区こども宅食を運営するコンソーシアムの構成団体であることや、支援ニーズがあるというお話を聞き、2024年10月からは、文京区こども宅食へも支援を開始することになりました。
—文京区こども宅食にご寄付いただいたコーヒーやお菓子などについて、ご家庭からは「嗜好品は我慢しているので嬉しい」といった声が寄せられています。こうした声についてどうお感じになりますか。
大熊:喜んでいただけて嬉しい限りです。WeSupport Familyでは主食類からお菓子まで様々な種類の食品を集めていて、在庫情報とあわせながら、支援団体ごとに必要なものをマッチングをしているんです。
実は我々としても去年の夏から50世帯くらいではありますがパントリーを直接やり始めていて、ご家庭のお話を聞く機会が増えています。やっぱり必要なものから食費を充てていくので、お菓子や嗜好品とか、あるいは化粧品とかもですが、心にとって必要なものがありがたいという声はすごくもらっています。
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>>2024年12月にオイシックス本社で行われたフードパントリーの様子
ー実際にパントリーも始められたんですね。他に新たな取り組みなどがあれば教えてください。
大熊:実はWeSupport Familyの立ち上げ前に見学に行った場所で、翌年小学1年生になるお子さんがいるご家庭に、寄付されたランドセルを渡しているところを目にすることがあったんです。その親子がものすごく喜んでいらっしゃったことが印象的で、支援は食べものだけじゃないんだなということをその時に感じました。
ここ数年は子どもの「体験格差」が大きな課題だと感じるようになり、昨年から食の体験機会を提供するようになりました。当社の生産者や支援企業の協力を得て、醤油蔵の見学にご招待したり、生産者さんを呼んでウインナー作りを体験したり、お菓子工場の見学を実施したりと、子どもだけでなく大人にとってもなかなか普段体験できない機会を提供しています。
お休みの日に参加した子どもたちが、休み明けに友達と会話するときに話題にあげてくれたらいいなと思いますし、長期的には、食の体験を通じて職業として興味をもってもらえるといいな、という思いもあります。
支援の輪をつなげていくために
ー支援の規模と幅をひろげてきたWeSupport Familyの取り組みですが、活動を続けていく上での課題はありますか?
大熊:同じように寄付品を集めて物流管理をおこなっている文京区こども宅食にも通じるかもしれませんが、「物流倉庫費」が経費の大部分を占めているということは大きな課題だと感じています。
我々の強みは、オイシックスをはじめとしたおよそ50万世帯の食品宅配の会員の皆さんがいてくださることだと思っています。会員の皆さんには寄付つきの商品を販売するなど、WeSupport Famlyへの活動支援をお願いしています。今以上に認知を拡大し、支援の輪を広げていければ、課題の解決にもつながると考えています。
ー文京区こども宅食と一緒に取り組んでみたいことがあれば教えてください。
大熊:例えば子ども食堂の場合は、むすびえさんのように、全国をネットワーク化する組織があることで、情報の流通が生まれやすくなっていると思います。フードパントリーのような事業を全国でネットワーク化してくれる団体さんはまだないと思っています。我々の場合は支援する団体さんの数も沢山いらっしゃるので、できるかわからないですが、その横のつながりをつくることができたら、例えばうまくいった事例やティップスを共有できるようになるなど、情報交流ができるネットワークになるのかなと思っています。
支援を迷っている企業の皆さんへ
ー支援を迷っている企業や団体の皆さんにメッセージをお願いします。
大熊:我々は支援や寄付をしたい企業にとって、手間の少ない「ワンストップ」のプラットフォームであることが特徴です。
寄付をしたい企業さんが寄付先を探したり、配送を管理したり、場合によっては複数個所に納品したりという必要がないんです。さらに、寄付が初めてだと不安なことも多いと思うんですけれども、「企業側とも支援団体側とも覚書を結んでいるので安心して寄付できる」「オイシックスさんなら安心して任せられる」ということを言っていただくことも多いです。
なにかしたいと考えている企業にとっては、文京区こども宅食やWe Support Familyの事務局を通すことで、少ない手間で安心して寄付をすることに繋がるのではないかな、と思います。
writing:座光寺るい
文京区こども宅食はふるさと納税による寄付を原資として活動しています!
文京区こども宅食の活動は、活動を応援してくださっている皆さんからのご寄付(ふるさと納税によるガバメントクラウドファンディング)で成り立っています。
配送する食品や日用品の多くは企業や団体からの寄付によるものですが、追加の食料購入費や配送費、活動費等が必要となります。そういった費用を、皆さんからお寄せいただくふるさと納税(ガバメントクラウドファウンディング)を用いて集めています。
皆さんのご寄付が、子どもたちや子育て家庭の力になります。今後も多くのご家庭にこども宅食をお届けするために、皆さんのご支援をよろしくお願いいたします。