82%の保護者が心理的ストレスが減少。 こども宅食の成果を示す「インパクト・レポート」を公開しました

こども宅食事務局

こども宅食事務局が、こども宅食の歩みや、子どもの貧困についてのニュースをお届けします!

文京区内の経済的に困窮する子育て世帯へ、2ヶ月に1回定期的に食品をお届けしている「こども宅食」を運営する「こども宅食コンソーシアム」は文京区内約690世帯のこども宅食利用家庭に行ったアンケート調査結果をもとに、事業が生み出した効果・成果に加え、事業の実施状況や利用家庭の実態やニーズを取りまとめた、2019年度インパクト・レポートを公開しました。
昨年度に続き、2回目のインパクト・レポートとなります。

支援を行うだけではなく、社会的な効果や価値を評価し、事業改善に活かす

文京区とNPO等、7つの組織が官民協働で行うこども宅食は、経済的に困窮する子育て家庭に食品をお届けしながら家庭とつながり、困り事があった際には行政の支援等につなげる活動を行っています。
また、その活動がどのような効果や価値を生んでいるかを評価し、事業改善に活かすため、こども宅食コンソーシアムでは、以下の2つの目的を持って、「社会的インパクト・マネジメント」を行なっています。
①社会的インパクト評価により、事業が生み出す社会的価値を可視化し、検証すること
②社会的インパクト・マネジメントを通して、こども宅食事業の運営改善をすること

インパクト・レポートでは、ロジックモデル(事業や組織が最終的に目指す変化・効果の実現に向けた事業の設計図)を用いた事業実施によるプロセス管理と、ロジックモデル上に設定した成果の検証について、利用者の方を対象に実施したアンケート等の分析結果をもとに実施しました。

 

社会的インパクトマネジメントとは「社会的インパクト」とは、短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカムのことであり、「社会的インパクト・マネジメント」とは、事業運営により得られた事業の社会的な効果や価値に関する情報にもとづいた事業改善や意思決定を行い、社会的インパクトの向上を志向するマネジメントのことを指す。「社会的インパクト・マネジメント・ガイドラインVer.1」(2018年社会的インパクト評価イニシアチブ作成 より引用

 

*調査概要評価対象期間 2017年10月(第1期の初回配送)〜2019年9月(第3期の初回配送前)
調査方法 オンラインアンケート(一部紙面にて実施)
調査実施期間 2019年9月27日から10月24日まで
調査対象総数 687世帯*
回収総数 431世帯
*評価対象期間中に宅食を利用したことがある世帯および2019年10月より新たに利用する世帯
2019年度インパクト・レポートの全文(PDF/49頁)
アンケート票

 

この調査では、①計画フェーズ、②実行フェーズ、③効果の把握フェーズ、の3つのフェーズごとに評価を行っています。

計画フェーズにおける評価:食品を送るアプローチは効果的

計画フェーズにおいては、現在の利用家庭には物理的・精神的な理由で、一般的な支援が届きにくい人が一定数いることから、「食品を送ることで、支援が届きにくい人とつながりを作り出す」というアプローチは効果的であることが確認されました。

実行フェーズにおける評価:

実行フェーズにおいては、こども宅食事業の認知度が高まったことに加えて、利用世帯の実態についての理解度も高まったことから、企業等からの寄付が増えました。その結果、スポーツ観戦や音楽鑑賞など体験の機会の種類が増えたことが特徴的でした。

効果の把握フェーズにおける評価:

事業の効果(アウトカム)においては、保護者・家庭の「心理的ストレスの減少」「可処分所得の向上(食費負担の軽減)」「食事内容の改善」の3項目において顕著な結果が見られました。

特に、昨年度に引き続き顕著な結果が出ている「心理的ストレスの減少」においては、保護者の82%にポジティブな変化が見られ、「気持ちが豊かになった」「社会とのつながりが感じられるようになった」との回答が多く、あらためて、こども宅食の主要な成果であることが確認できました。

子ども・若者貧困研究センター長 阿部 彩氏の総評

こども宅食の開始時からアドバイザーを務めて頂いている東京都立大学教授/子ども・若者貧困研究センター長の阿部 彩さんからは、以下のような総評を頂きました。

阿部 彩氏(本プロジェクトアドバイザー/東京都立大学 人文社会学部人間社会学科 教授 兼 子ども・若者貧困研究センター長)

 

*アドバイザー・阿部彩さんコメント本プロジェクトも3年目に入り、インパクト・レポートもますます精錬化されてきたように思います。利用者の生活の実態を明らかにし、プロジェクトがどのような変化を彼女/彼らにもたらしているのかを「見える化」することによって、プロジェクトの目指すべき方向性が明らかになってきたように見えます。
今回の結果は、前回同様、こども宅食が食の支援だけではない、さまざまな便益をもたらしていることがデータで示されました。数字は無機質ですが、その一つ一つの数字の後ろには、たくさんの笑顔があります。
一方で、本プロジェクトがまだ達成できていない課題も明らかになってきました。利用者の多くの方がこども宅食以外の支援に繋がっていないのです。このような人々と宅食を通じて繋がることができたことは素晴らしいことです。しかし、宅食以外の支援にどうやって繫げていくのか。本プロジェクトの次に掲げるこのミッションは、官民を問わず関連機関がつながったコンソーシアムだからこそ達成できるものです。
最後に、今回一番衝撃的であったのが、前回アンケートにも増して生活困難層が増えていたことです。今回のアンケートは2019年10月に実施されており、まだ景気もよかった頃にデータが取られていますが、その時でさえ利用者の75%が生活困難層でした。今、新型コロナ・ウィルスの影響で未曾有の世界的経済危機が起こりつつあります。こども宅食を必要とする人も激増するでしょう。今こそ、こども宅食がその力を発揮する時です。

 

2020年度、文京区こども宅食事業が目指すもの

私たちは今回可視化されたデータをもとに、さらにこども宅食事業の改善とニーズにあった支援が実現できる事業となるよう努めまてまいります。また、この知見を全国で「こども宅食」を始めたいと考えている事業者や自治体に拡げていきます。

2020年度も、こども宅食については文京区ふるさと納税の仕組みを使って運営資金を募っています。支援活動を実施するだけでなく、このように結果や成果を振り返り、支援事業をより良いものへと向上させてまいります。

【追い詰められるその前に。命をつなぐ「こども宅食」で親子の笑顔を守りたい】

※こども宅食は登録商標です

2018年度インパクトレポートはこちら

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